専任教員紹介
戻る西 圭介Keisuke Nishi

私は今から100年ほど前のドイツにおける自転車の生産・販売・普及について研究しています。当時のドイツ社会は大きな変化の渦中にありました。長年宰相として辣腕をふるっていたビスマルクの退陣、社会主義者鎮圧法の失効、国際競争力を持った工業の台頭(電機工業、工作機械工業、化学工業など)、都市化の進展、労働者の増大などの諸現象が相互に関連しながら現れるという時代でありました。私の研究している自転車工業もこの時期に拡大を遂げ、アメリカ製品との価格競争を通じて組立工程の分割や特殊工作機械の導入などを行っていきます。こうして大量に生産された自転車は、金属加工の手工業者が修理業と小売業に参入することによって拡充された販売サービス網を通じて販売されていきます。このような小売業者と並んで、この時代に全国展開する大規模小売業も発展し、彼らによる競争が激化したことによって自転車価格は下落していきます。この価格下落によって19世紀末まで主に市民のものであった自転車は、第一次世界大戦前には一部の労働者にも購入されていきます。労働者が購入できる個人移動手段としては自転車が初めてのものであり、都市中心域の土地価格が高騰して「郊外」が現れる時期にそれは普及していきます。
このように、自転車の生産・販売・普及をドイツの経済社会との関連で考察することによって、ドイツにおける大量生産・大量消費社会の端緒が明らかとなります。将来的には、日本における自転車の生産・販売・普及も検討することによって、ドイツと日本の経済社会を比較したいと考えています。