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教員の現代経済ウォッチング

Vol.31 サブプライムローン問題雑感

ここ数年来の世界経済における最大のトピックスは、アメリカで発生したサブプライムローン問題やリーマンショック、そしてその後の世界的な経済危機と考えてよいでしょう。この問題については、新聞の解説記事やわかりやすい新書本から専門論文や国際機関などによる研究報告まで様々な解説を目にすることができますが、問題自体が複雑であり、私自身も金融論の専門家でもありません。そこで今回は、サブプライムローン問題の内容のそのものや精緻な分析について深く言及することは避け、少し視点を変えて、歴史的視点を織り込みながらこの問題に関する感想めいたものを綴ってみたいと思います。
角井 正幸

角井 正幸

皆さんご存じのように、経済成長とはGDPの増大として表されます。すなわち、経済学では豊かになることを生産が増えることと考えています。そして、その生産の増大が「生産額」(=金額)の増大として捉えられていることにも注意しておきましょう。さて、通常経済学では、生産の増大は投入する生産要素(労働など)を増やすか、技術進歩を用いるかによって達成できると考えます。前者の労働などの生産要素は増やし続ければ枯渇しますが、後者の新しい技術を生み出す「アイディア」は枯渇することなく次々と生まれ続ける可能性があります。たとえば、1993年のノーベル経済学賞受賞者であるロバート・フォーゲル氏は、1968年に同志社大学などで行った集中講義の中で、1930年代に多くの経済学者がアメリカの経済成長は持続せず停滞すると悲観的に考えていたことに対して、人々の創意と英知によって生み出される技術進歩が続く限り、経済成長は持続すると語りました。

さて、サブプライムローンは、これも皆さんご存じのように過去にローン返済が滞った人々に対する住宅ローンです。このような返済リスクの高いローンを「売れる商品」にするために多くの優秀な技術者が英知を結集し、サブプライムローンを「儲かる商品」へと変貌させました。たしかにこれは新しい「アイディア」によってより多くのお金を生み出すことに成功し、経済成長をもたらしたように見えました。しかしそれは、単にお金をより多くのお金に見せかけるアイディアでしかなく、そこから生み出されたものはバブルでしかありませんでした。

私たちは長い歴史を通して、どのようにすれば経済が成長し豊かになるかについて考え続けてきました。そして、新しい技術を生み出す「アイディア」がさまざまな形で私たちの生活を豊かにし、便利にしてきました。しかしこれらのアイディアの使い方によっては、大きな代償を支払わなければならないようになる可能性もあります。私たちは、より多くのお金を手に入れることのみが豊かさであるという考えを改めるよう、このような歴史的経験から学び取る必要があるのではないでしょうか。

(文中のフォーゲルの発言部分は、フォーゲル,R. W.,(1977)(田口・渋谷訳)『アメリカ経済発展の再考察』南雲堂pp.97-100を参考にしました。)


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