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教員の現代経済ウォッチング

Vol.40 時代が変われば経済学も変わる

経済学にまつわる小話を一つ紹介しましょう。
某教授が担当する経済学の授業を親子二代にわたって受けていたのですが、あるとき、父親が息子の試験問題をみて驚きました。
「自分の学生時代と、問題が一緒だ!?」
父親の驚きを知った息子は、教授にその真偽を問い合わせると、教授は動じることなく平然として言い放ちました。
「問題は同じでも答えは違うのだ!!」
西村 理

西村 理

長く生きていると、こんな小話にも驚かなくなりました。私の青春時代はいまの中国と同じように経済は活況に満ちた高度経済成長の時代。テレビや電気冷蔵庫などの電化製品、クルマを各家庭が競って買い求め、日々の生活が目に見えて豊かになりました。その当時、経済成長の恩恵を多いに受けた反面、すべてのモノの平均価格である物価の上昇、すなわち、インフレに悩まされていたのです。インフレは貨幣価値を下落させるため、特に金利収入で生活している人や所得の低い人にとっては深刻な問題で、インフレ対策が政府にとって重要な経済政策の一つでした。

ところが、いまはどうでしょうか。日本は低経済成長の時代でデフレに悩まされています。商店やスーパーは値引き競争をして、少しでも多くの顧客を呼びこもうと必死です。そのため、政府の経済対策は景気を回復させ失業者を減らすことが重要課題になっています。ときには、インフレ・ターゲット(物価上昇率の目標値)を設定したインフレ政策も論じられている有様です。まさに、隔世の感があります。

他にこんな例もあります。1980年代の米国はレーガン大統領の時代でした。彼が大統領に就任したときは、米国とソ連の冷戦時代の真只中でした。そこで、彼は強い米国を実現するために、ドル高・高金利政策を推し進めたのです。そのため、ドルの独歩高を招く結果になってしまいました。自国通貨の価値を高くすることで、その国の威信を高揚させていたのです。終には、ドル高が世界のマネーを米国に引き寄せ、ソ連や東欧などの社会主義諸国は崩壊し、中国は社会主義市場経済への道を選ぶことになりました。

現在、リーマン・ショックを契機に、世界経済は100年に1度といわれる大不況に襲われました。そこで、欧米をはじめとする主要国は、輸出を梃子(てこ)にして不況から脱け出そうとしています。たとえば米国ですが、輸出を推し進め貿易赤字を減らそうとしてドル安を容認しているのです。他の国も自国通貨の価値が下落する状況に対して、特別な対策を採っていません。その結果、各国の間で通貨安戦争が起こっています。国の威信はどこかに吹っ飛んでしまった状態です。

経済はまさに生き物です。時代と共に時々刻々変化しています。したがって、経済学には絶対的な答えはありません。そこに経済学を学ぶ面白さがあります。

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