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教員の現代経済ウォッチング

Vol.10 「こっちの水は甘い」のか?

入学・進級おめでとうございます。この教員のリレー・エッセーも2年目を迎えます。鹿野新学部長に代わって本年度のコーディネーターを務めます。昨年度と同様、教員の研究関心や折々の社会的関心を織り交ぜてご紹介しますので、よろしくお願いします。

さて、日本ではあまり話題になっていませんが、来月1日にロンドンの市長選挙が行われます。現職候補が大胆な環境対策を掲げて現地で注目を集めています。

ロンドンは世界中から観光客を集め、テムズ河畔の国会議事堂とその時計台ビッグ・ベンなどが有名です。しかし、テムズ川は汚いことで有名な時代もありました。今からちょうど150年前の1858年はとくに悪臭がひどく、後に首相になるディズレーリはあまりの悪臭に下院の議事をほうり投げて帰宅してしまったほどです。
菅 一城

菅 一城

悪臭や汚染の原因は工業排水や生活排水でした。当時のイギリスは産業革命を経て繁栄の絶頂にありました。しかし、上下水道の整備は不十分で、テムズ川は飲み水の源であるとともに、無料の下水道でもあったのです。汚染されたテムズ川は悪臭や伝染病も広め、多くの人びとを苦しめましたが、工場経営者や地主、家主たちは無料の下水道を使う権利、環境を汚す権利を固守していました。

それから150年、現職のリヴィングストン市長は4年後のオリンピックやヒースロー空港拡張と並ぶ争点に環境対策を掲げています。2月には市民に対して、輸送の段階で多くの二酸化炭素の排出を伴うミネラル・ウォーターを飲まずにロンドンの水道水を飲むよう呼びかけました。環境省や水道会社はこれを支持しているようですが、ミネラル・ウォーターの関係者にとって喜ばしい提言ではないはずです。

このエピソードの結論は1つではありません。当然、この提案の是非は1つの論点ですが、もっと一般的な環境への負荷や経済的利害をめぐる負担の配分や利益の分配に関する抽象的議論への入り口になるのと同時に、この150年間にロンドンで何がおきたのかという歴史的論争にもつながります。経済学部ではそれらの多様な関心に答えるべく53人の教員が皆さんを待っています。そして皆さんの関心のきっかけは日々の生活の至るところ――たとえば水道水を飲むかミネラル・ウォーターを買うか――にあります。これからの1年間に皆さんが興味深い問題、自分の感覚にあう経済学や教員に出会えるよう願っています。

さて、ロンドン市長はだれになるのでしょうか?

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