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教員の現代経済ウォッチング

Vol.13 温暖化と排出権取引

正月以来「環境ブーム」が続いています。7月にG8先進国サミットが洞爺湖で開催されるためです。このサミットでは、温暖化問題について議論されることが確実です。今や、温暖化問題は先進国のみならず、全ての国にとって避けて通ることができない重大な課題(気候安全保障問題)です。洞爺湖では、京都議定書の第一約束期間(2008年~2012年)以降の温暖化への取り組みの枠組みについて議論されます。この枠組みはバリ・ロードマップによれば2009年までにまとめる必要があります。この意味でわが国のイニシアティブとリーダーシップが問われる会議でもあります。
郡嶌 孝

郡嶌 孝

わが国は、京都議定書において第一約束期間に1990年のCO2排出総量から6%削減することを約束しています。この約束を果たす見通しがなければ、会議をリードすることはできず、この約束を守るには、わが国の全ての人々が様々な取り組みを進めていかなければなりません。そのため、注目を集めているのが、排出権(排出量)取引-排出主体は割り当てられた排出枠以下に排出量を削減すれば、割り当て以上に排出した主体に削減分を売ることができる―という案です。「福田ヴィジョン」でも今秋からの試行が謳われています。

排出権取引はもともと京都議定書において米国が提唱したものです。米国は国内で硫黄酸化物(SOx)等での実績があり、連邦政府はCO2への適用が経済の妨げになるとして躊躇していますが、州政府レベルではすでに導入されています。欧州では、英国が導入した後、2005年からEUでも制度が発足しました。ただし、排出権を取引するには、取引所等の経済的制度を整備する必要があり、その主導権争いが続いています。環境問題はもはや単なる環境問題ではなく、経済問題であり、政治問題です。わが国がこの流れに取り残されるのではないかという焦りさえ感じられます。

排出権取引の背後にあるのは市場環境主義という考え方です。環境破壊の原因は、環境の所有権が誰にあるのかはっきりしないことにあり、そのため、市場で取引できないことになります。従って、汚す権利(=排出権)を設定(キャップ)し、その売買(トレード)が可能になれば環境問題の解決を図ることができます。排出権取引制度は従来の規制に比べて、費用面でも環境対策としても効率的とされますが、他方では、汚す権利の売買に対するモラル上の批判、市場化による金融商品化やマネーゲーム化への危惧、結果的に総量を削減せずオフセットするだけといった反対意見もあります。すでに削減努力をした企業への配慮もありません。経済成長を続けることも厳しくなります。経済と環境の両立をはかる制度設計は可能か、議論は続きます。

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