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教員の現代経済ウォッチング

Vol.15 医師不足の根源は女医退職率の高さ

医師不足が深刻になっている日本です。厚生労働省はこの深刻な事態に対処すべく、大学の医学部定員を増加する案を出しています。医者の養成は大学6年間、そしてその後2年間の研修を経るので合計8年もかかるので、今ここで医学生の数を増加しても、すぐには医師不足の解消にはつながりません。

医師不足には様々な理由があります。第1に、医者は地方よりも都市部で勤務かつ開業を希望する人が多いので、地方での医師不足が目立つようになります。第2に、診療科目に偏在があります。よく指摘されるように産婦人科、小児科、麻酔科などが不足しています。これらの理由に関しては、例えば地方に行く医者を優遇するとか、不足する診療科に行く人を優遇する、という案によって多少の解決はつきます。
橘木 俊詔

橘木 俊詔

ところでもっとも深刻な理由は、実は結婚・出産などによって退職する女性医師の人数がかなり増加したことにあります。ここ10年から15年ほど、大学の医学部に進学する女子学生の数がかなり増加しています。医学部入試は一般的に高いレベルにありますが、偏差値の高い大学で女性入学率は10~20%、やや低い大学で30~40%に達しており、この結果医者全体の中で女性比率が高まっているのです。

医者以外の世界では女性は結婚・出産するとかなりの人数が労働市場から退出しています。女性医師もこのことから逃れられないのです。人間であれば結婚・出産は人生の大切な行事です。しかし、多くの女性は子育て終了後に再び労働市場に戻っています。

しかし、女医の場合にはこのような人生経路を歩むことに、かなりの留意が必要です。第1に、一度医療の世界から離れてからもう一度その仕事に入るのは、技能の関係から容易ではありません。数年離れるともう医療に従事できないほど高い技能をもっているからです。第2に、国公立大学の医学部であれば一人の医者を養成するのに、税金を7,000万円前後投入していると言われます。医者を途中でやめてしまえば、税金のムダ使いという声が上がっても不思議ではありません。

女医が中途でやめずに続けて職務をこなすことは、技能の陳腐化や公共財という見地から望ましいことです。女性の労働供給、教育・技能、税金、公共性などは、すぐれて経済学上の問題として議論が可能です。経済学を学ぶ学生さんの意見を聞きたいものです。

橘木 俊詔橘木 俊詔
元 同志社大学経済学部 特別客員教授
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