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教員の現代経済ウォッチング

Vol.17 経済学の根底にある独特な価値観について

経済学は独特の価値観に基づいて構築されています。以下ではその幾つかを紹介します。まず、経済学では「人間の幸せ=欲求の充足」と考えています。しかし、これは1つの考え方でしかありません。例えば「欲望から解放されたときに初めて人間は幸せになる」と教えている宗教もあります。また経済学に登場する人は「せっせと働いて財を消費するのが良い人生」と考えますが、人間の考え方にはいろいろあります。何もしないで「ぼー」と暮らすのが良い人生だと思っている人たちもいるはずです。

また経済学は「目的を達成するためには資源を有効に利用することが重要」と考えます。無駄の存在を否定するのです。しかし現実には「適度な無駄」の存在は人間生活の豊かさのために必要だと考える人がいても不思議ではありません。例えば趣味で魚を釣っている人でも「効率の哲学」に捕らわれると「効率よく魚を取ること」が目標になってしまったりします。「趣味としての魚釣」は漁師さんの仕事とは違いますから効率的である必要はないはずです。さまざまな無駄に囲まれてその無駄を楽しむのが趣味で、これが「プロ=仕事」との違いであると思うのです。

次に経済学では社会全体の利益を最大化することが重要という考え方がとても強く、「社会全体の利益のためには少数の人々が犠牲を払ってもやむを得ない」という考え方があります。例えば値段が高くおいしくもないのに儲っている食堂があったとしましょう。「経営学部の考え方に染まった人」は「同じように儲けるにはどうすれば良いか」というような疑問を持って分析するかもしれません。経済学的な「全体的利益優先の哲学」に染まった人の反応は「値段が高くおいしくない食堂は社会全体の利益に反するから市場から淘汰されるべきだ」と感じて、どうすれば倒産させることができるかを分析することになります。

経済学を勉強していれば、(私のように)知らず知らずの間にその考え方=価値観に染まってしまいます。というわけで経済学がどのような価値観に基づいているかを知って経済学を勉強する方が良いと思います。このシリーズのタイトルは現代経済ウォッチングですが、以上は現代経済学の価値観に染まらないようにウォッチして欲しいと思っての文章です。

中尾 武雄
同志社大学経済学部 名誉教授
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