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教員の現代経済ウォッチング

Vol.20 <危機>はどこから来るのか?

危機は、旧来の前提が崩れたことを示しています。危機は、人々がその判断や行動の拠りどころとして、疑いなく存在すると信じていた「地面」が、失われたことを意味します。

ヨーロッパの北西端、グリーンランドに近いアイスランドでは、政府が奨励して、国民と銀行に(今となっては非常に危険な)投資や融資を膨張させました。それは大成功して、世界でも有数の恵まれた生活水準を実現していたのです。しかし、今、アイスランドはIMFの管理下にあります。人口30万人余りの国が、独自の通貨を持って、金融市場を介する世界的規模の資金調達と投融資で繁栄する、というシナリオは消滅しました。

イギリスの預金者に対する政治家のあいまいな発言がイギリス政府の怒りを招き、テロ対策法まで使ってロンドンのアイスランド資産は凍結されました。三つの銀行をすべて国有化しますが、その債務はアイスランドのGDPをはるかに超えており、事実上の破産です。群集は街頭に出て、ナベを叩いて政府に抗議し、中央銀行総裁には生卵が投げつけられました。

10年ほど前、アジア通貨危機やLTCM危機について、繰り返し言われたことです。ある事件が「目覚まし」(ウェイク・アップ・コール)になって、人々の「合理的な」判断や行動が変わりました。もちろん、こうした群集心理や群集行動は、昔から、金融市場の「病」(熱病、そして、狂気)でした。しかし、経済や社会がますます「金融資産の論理」で売買され、評価されるようになって、はるかに深刻な影響を及ぼすようになりました。

今起きている「サブプライム危機」、あるいは、「世界金融危機」(まだ拡大し続けているために名前も決まりません)は、昨年9月のリーマンブラザーズ証券が倒産したとき、一気に「危機」のレベルを上げました。しかし、ヨーロッパで、投資信託が閉鎖されて巨額の損失を処理した、というニュースを聞いたのは、もっと前です。さらに、よく知られているように、数年前から、アメリカと中国(そして日本も含めたアジア諸国)との国際収支不均衡が、次の通貨危機やバブルの温床になる、と繰り返し警告されていました。

2001年末、アルゼンチンの通貨・経済危機は頂点に達し、関税を引き上げたり、地方政府が疑似通貨を発行したり、ドルではなくユーロにも通貨価値を固定すると計画したり、さまざまな模索の末に、政権が崩壊しました。改革を指導した優秀な経済学者で大臣でもあった政治家に卵が投げつけられ、議会には放火されました。

危機は、人々の心の内から、それを支配してきた信仰や学説の失墜、政治家の虚ろな言動、中央銀行の弱さ、市場の基礎的条件の急速な悪化、倒産、失業、議会に押し寄せる暴徒の怒り、つまり、ナベを叩く音や、政治家と銀行家に投げつけられる卵、から来るのです。

経済学にも重大な責任があるはずです。教室に卵を用意するべきでしょうか? ・・・チャールズ・P・キンドルバーガーは、世界大恐慌がなぜあれほど深刻で、長期に及び、しかも国際的に波及したのか、と考えました。ぜひ読んでください。それでも不満なら・・・ 卵です。

小野塚 佳光小野塚 佳光
専任教員紹介
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