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教員の現代経済ウォッチング

Vol.24 「長い」20世紀

「長い」20世紀?1901年から2000年までの百年と決まっている20世紀に長いも短いも無いのではないかと、思われるかもしれません。でもこれは、例えば最近翻訳されたアリギ著『長い20世紀』という本のタイトルが示しているように、決して単なる言葉遊びではありません。

この言葉、もともとはイギリスの歴史家ホブスボームが使った「長い」19世紀という表現に由来していると思われます。彼の言う「長い」19世紀は、イギリスで産業革命が始まった18世紀後半、とりわけフランスで「革命」の起こった1789年から第一次世界大戦(1914/18年)に至る時期を指しています。さらに彼はその対として、第一次世界大戦を起点とし、ロシア革命(1917年)によって成立した社会主義世界が崩壊する1989年を帰着点とする、「短い」20世紀という表現も使っています。
川越 修

川越 修

歴史というのは単に確定した過去の事実の集合ではなく、現在に生きる私たちが過去との間で交わす「対話」の産物であり、異なった解釈を通じた書き換えが可能だというのは、カーというこれもイギリスの歴史家の有名な言葉です。こうした考えに立てば、「長い」という形容詞は、近代から現代にかけて経済や社会の歴史をどう解釈するかをめぐる議論と関わっていることになります。

19世紀から20世紀への世紀転換期のヨーロッパは、「長い」19世紀に進行した工業化の結果、国際的にも(植民地獲得競争、イギリスの地位の低下など)、国内的にも(都市化の進行や出生率の大幅な低下、生活水準の上昇など)、さらにまた学問の分野でも(経済学の革新、社会学の登場など)、大きな地殻変動を経験しました。そしてそこから、現代の私たちの生活を支え、同時に縛り付けてもいる、経済や社会の新しい仕組み(福祉国家)が登場してくるのです。

変わりそうで変わらない現代の経済社会の仕組みの成立過程を歴史的に探り、その問題点の根っこを掘り起こし、それを通じて新しい21世紀の経済社会のあり方を考える(ここに社会科学的な歴史研究の醍醐味があります)ために、「長い」20世紀という概念は、私たちに格好の手がかりを与えてくれます。

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