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教員の現代経済ウォッチング

Vol.3 経済学と市場

第1回でも述べられているように、経済問題についての言説はギリシャ時代にまで遡ることができますが、われわれが一般に経済学と呼ぶ学問は、16世紀に生まれ18世紀末に成立しました。こうした経済学の歴史は、資本主義経済の成立の歴史とほとんど一致しています。経済学は、資本主義経済のもとでの社会問題を解決するために生まれてきたといえるのです。

では、資本主義とはどのようなものでしょうか?色々な表現がありますが、簡単にいえば、「会社を中心とした社会」です。現在、日本には約260万社もの会社があるといわれています。そして、私たちが直接・間接に消費するモノやサービスの大半は会社の生産物です。また、多くの人々は会社で働きお金を稼いでこれらを買うのです。もちろん、公共のサービスもありますが、それは会社やそこで働く人々からの税金で賄われています。「会社」をひっくり返すと「社会」。会社を中心に、モノやサービスが交換され、それを通じて人間の社会関係が形づくられているのです。つまり、会社が中心になって社会を編成しているのが、資本主義社会だと考えます。
谷村 智輝

谷村 智輝

ところで、モノやサービスを交換する場所を「市場」と呼び、経済学はその成立以来、市場を重視してきました。というのも、経済が、「交換にもとづく人間と人間の社会関係」を意味するからです。ただ、経済学が市場を重視してきたといっても、市場機能への全幅の信頼を必ずしも意味するのではありません。経済学の歴史では、この市場機能への信頼をめぐって様々な意見の対立を経験してきました。

例えば、現在注目されている格差問題についても、規制を緩和して市場での自由競争を促進させる新自由主義的な立場をとるかそれとも福祉などの公的サービスの充実をはかり政府の役割に重きを置おくかで、具体的な政策も異なってきます。私自身は、市場の万能性に疑問をもつにとどまらず、働いて生きていけない人々がいる一方で働き過ぎの人々がいること、結局、両方とも会社が利益を生み出すメカニズムと密接に関わっていることから、市場の分析だけでなく、あらためて会社そのものの動きや、会社とそこで働く人との関係に焦点をあてるべきではないかと考えています。

さて、1990年代初頭、来るべき21世紀の経済学の姿について著名な経済学者たちのエッセイ集が出版されました(『フューチャー・オブ・エコノミックス』)。彼らは共通して、人間社会の経済問題の本質はいままでもそしてこれからもほとんど変わらないのではないかと考えています。そして、「経済学が真に役に立つ」ものであるためには、(1)市場分析に耽溺することなく経済史など歴史に学ぶこと、(2)主流の新古典派経済学だけでなく多様なアプローチを認めそれらを活かすこと、(3)政治学や経営学などの他の社会科学や認知科学など様々な科学と協力することが重要ではないかと述べています。皆さんには、こうした指摘を心にとめて経済学を学んで欲しいと思います。

谷村 智輝谷村 智輝
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