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教員の現代経済ウォッチング

Vol.34 超少子化問題-解決に必要なものとは?-

この原稿を書いているのは6月ですが、掲載される7月早々に参議院選挙があります。政局はどうなるのでしょうか。御存じの通り、民主党の目玉政策は「子ども手当」で受け取り開始が6月でした。手当を受け取ったお家の方は嬉しく思い、それ以外の方は面白くなかったのでしょうか。多かれ少なかれ、選挙の投票行動にも影響するでしょう。
船橋 恒裕

船橋 恒裕

では、なぜ民主党は、昨年の衆議院選挙で子ども手当の支給を公約にしたのでしょうか。選挙目当てのばらまき政策だといってしまえば、それまでかもしれませんが、手厚い子育て支援策を行っているフランスの出生率が上昇していることも影響しています。先進諸国はいずれも少子化傾向に陥っていましたが、近年、いくつかの国は出生率が回復してきています。中でもフランスは、一人の女性が一生に産む子どもの数を表す「合計特殊出生率」が1994年に1.66まで落ち込みましたが、国力回復のために始めた子育て支援策によって、2008年には2.02 にまで回復しました。世界的不況の中、09年も1.99[暫定値]で、大きな低下はなかったといえます。他方、日本は、2005年に1.25まで低下した後、08年の1.37まで上昇しました。しかし、これは、うるう年や35歳以上の団塊ジュニア世代による出産増の影響でした。6月発表の09年の出生率は、前年と同じ1.37で、出生数は106.9万人(前年比2.2万人減)でした。今後も出生数は微減傾向が続き、人口が減少、高齢化もさらに進む見込みです。

先進諸国の少子化状況には、4つのケースがあるように思われます。1つ目は、スウェーデン(07年出生率1.88)のような国家による少子化対策が機能し、男女共同参画社会で、男性が育児に協力的なケースです。2つ目は、国家による対策は北欧ほど進んでいませんが、男女共同参画社会が当たり前で、男性が育児に協力的でベビーシッターなどの民間の育児産業も発達しているケースです。イギリス(07年出生率1.90)やアメリカ(08年出生率2.09[暫定値])も該当します。3つ目は、男性の育児協力は少ないのですが、少子化対策が行き届き、財政支出も高いケースです。これがフランスで、政府による保育所の充実、母子への差別なき対応など、出産より育児に重点を置いた政策により、婚外子、外国人出産、40代の出産などが増加しました。働く女性の出産へ対する社会の寛容さも大きく影響しています。最後に、男女共同参画社会の実現に至らず、男性の育児協力が少なく、子どもは母親が仕事を控えて育てるものであるという育児への保守的考えが強いケースです。それゆえに、少子化対策が乏しい、または、うまく機能していないケースです。ドイツ(07年出生率1.37)もフランスに対抗して少子化対策への支出を増加していますが、保守的考えが強いためか保育所の受け入れ人数も少なく、出生率改善に至っていません。日本やイタリア(07年出生率1.37)は、保守的社会で少子化対策への財政支出も低く、韓国(09年出生率1.15)はさらに顕著です。民主党の子ども手当は、これまでこれといった少子化対策がなかったという点から画期的ですが、フランスのような子どもが増えるほど手厚い支給を行うことや、母子の様々な生活形態に合わせたきめ細かい手当もなく、保育所充実政策もありません。さらには、財源確保が安定せず、将来にわたって支給されるかどうかわからない政策では、出生率改善は期待薄でしょう。

昨年、英科学誌『ネイチャー(Nature)』に、「国が豊かになるほど出生率は下がる」というかつての鉄則は、ある段階まで発展が進むと覆されるという研究結果が発表されました。研究によると、フランス、スウェーデン、アメリカ、イギリス、オーストラリア(07年出生率1.97)など、富裕国のちょっとしたベビーブームの背景には、女性が子どもを産むという選択を取りやすいように社会が変わってきていることが、大きく影響しているとのことです。また、これらの国々と同等程度の富裕国であるのに出生率は低いという例外国があり、それは日本や韓国で、女性の社会的地位が比較的過小評価されているからではないかと分析しています。日本では、不景気により男性の多くが共働きを希望する中、意外にも、若い女性の専業主婦願望は高まっています。これは、女性の社会進出が厳しいことの裏返しかもしれません。出生率の上昇には、「女性に優しい社会」がカギであり、政府による少子化対策への早急な取り組みとともに、我々の意識改革も急務だということでしょう。

船橋 恒裕船橋 恒裕
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