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教員の現代経済ウォッチング

Vol.36 経済学の限界と効用

大学入学後の最初の経済学の講義は、「限界効用逓減の法則」でした。冒頭、1杯目のビールの味は格別に美味しいが、2杯目、3杯目と飲んでいけば,だんだんとビールの味が落ちていく。すなわち、1杯目から追加的に飲んでいけば、ビールから得られる追加的満足度、いわゆる限界効用が下がっていくと。未成年の飲酒は法律違反ですが、当時入学する大学生は、現役よりも1浪、2浪の学生が圧倒的に多く、コンパ(飲み会)をすれば、飲酒は常識ということで、先生もそれを前提に話を進めているわけです。因みに小生も、浪人中の6月初旬の「熱田祭」ではじめてビールを飲みましたが、そのとき、ビールを2~3本空けました。以後、今日までやまらずにいます。これは蛇足でした。
河合 宣孝

河合 宣孝

しかし、この講義1回限りで、後は休講が続き、試験はどうなるかとヤキモキしていたら、この講義で先生が翻訳・指定された本(ライオネル ロビンズ著『経済学の本質と意義』)から出題するという情報が入ってきました。それは先生からの指示でなくて、合格者数の多い名門の高校出身者の先輩の情報で、予想通り、経済学の前期試験問題は、「個人間の効用の比較可能性について述べよ」でした。事前に過去問の解答を暗記して事なきを得たしだいですが、今日の講義回数の制約を思えば、当時の講義は全く野放し状態でした。

それでは、この「限界効用逓減」を財・サービスから得られる効用ではなく、所得に置き換えて「所得の限界効用逓減」を仮定し、つぎのような問題を検討してみることにしましょう。「正常な硬貨を投げて表が出れば100円を受け取り、裏が出たら100円を支払う」という約束の賭けは多分成立します。しかし、「正常な硬貨を投げて表が出れば10,000円を受け取り、裏が出たら10,000円を支払う」という約束の賭けは成立しません。なぜか?

そこで、ある人の小遣い(所得)は、月5万円としましょう。100円の賭けをすれば、勝てば小遣いは50,100円、負ければ49,900円となりますが、この100円の増減で追加される効用・負の効用はほとんど無視しうる大きさです。したがって、100円の賭けはほとんど痛みを伴わないので、賭けは成立します。しかし、10,000円の賭けをすれば、勝てば小遣いは60,000円、負ければ40,000円となり、10,000円の増減で追加される効用・負効用は必ず喜怒哀楽を伴います。しかも、所得の限界効用逓減の仮定より、10,000円の減少に伴う負効用は絶対値で、10,000円の増加に伴う効用を上回るので、10,000円の賭けは成立しません。

それにもかかわらず、実際には10,000円の賭けをする人がいるかもしれません。経済理論では、こういう人を危険愛好者(risk lover)と呼び、上述の10,000円の賭けをしない人を、危険回避者(risk averter)と呼ぶのです。

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