こちらに共通ヘッダが追加されます。
  1. 経済学部/経済学研究科ホーム
  2.  > 教員の現代経済ウォッチング
  3.  > Vol.37 iPadと電子書籍ビジネス

教員の現代経済ウォッチング

Vol.37 iPadと電子書籍ビジネス

今年4月に米国で発売されたiPadは、全世界で80日間で300万台の販売台数を記録しました。日本でも発売前から注文が殺到し、話題となりました。iPadが成功した要因は、いろいろと分析されていますが、何よりもタブレット型の新しいスタイルのモバイルパソコンとして売り出されたのがユーザの心を掴んだと言えます。これまでのノートパソコンの画面のように「デスクトップ(作業机)」を持ち歩くイメージではなく、本やノート、プレーヤー、ポータブルゲーム機などを「トートバッグ」に放り込んで持ち歩くといったイメージ、あるいはリビングなどに置かれた「マガジンラック」のようにさっと雑誌などを取り出して読むイメージで使うパソコンというのが、スタイリッシュで使いやすいのでしょう。(よく考えると出先に机を持ち出して複雑な作業をする人など、本来いないですね。)ワイヤレス通信機能を備え、いつでも簡単にネットにアクセスできるようにしたことも大きいと言われています。
高井 才明

高井 才明

iPadの目玉となっている機能の1つに、電子書籍があります。iPhoneやiPodと異なり、雑誌や本を読むのに適したサイズにし、iTunesで音楽ソフトを販売するのと同様にiBooksから電子書籍を販売するというビジネスモデルをAppleは構築しました。先のAmazonのKindleの成功とあいまって、米国では電子書籍市場が賑わい、教科書を電子書籍で提供することを決めた大学もあります。

しかし、日本では、iPadの画面サイズの恩恵を受けるはずの電子書籍やビデオソフトのコンテンツが米国に比べてなかなか流通しないのが現状です。とくに電子書籍については、日米で書店の数や言語、本の値段・サイズなどの条件が違うこともありますが、もともとの書籍の流通形態の違いやそれに絡んで利権関係が異なることが大きな障壁になっているのでしょう。米国では、出版社と小売である書店が直接取引し、書店が本の価格を決定するため、通常出版社にとって販路を拡大するのが難しい反面、出版社とAppleやAmazonなどのエージェンシーとが合意するだけで電子書籍の流通モデルを作ることができました。それに対して、日本では、出版社と書店のほかに販売取次会社が介在し委託販売の形をとっていて、再販契約によって出版社が決めた定価で販売することになっているため、出版社が直接書籍を電子化して販売することに対する風当たりも強く、電子書籍の流通モデルが確立しづらい状況にあります。ビデオソフトについても、米国ではハリウッドなどの制作会社がコンテンツを直接販売していて流通させやすいのに対して、日本では流通業務を行っている放送局などが制作会社に依頼して作成させたコンテンツを自ら販売している、といったような構造の違いがネックになっているようです。

ビジネスチャンスに乗らない手はありませんが、出版、放送業界などの独自の構造を持つ既存の業界では、業界全体を巻き込んだ新しいビジネスモデルの構築が大きな課題となっています。

高井 才明高井 才明
専任教員紹介
.