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教員の現代経済ウォッチング

Vol.4 歴史に企業の社会的責任を学ぶ

経済学では通常、企業は自らの利潤の極大化を図れば事足れりとされています。しかし、現代の企業は、利益の追求にとどまらず、地球環境を保全しなければならないという持続可能な成長の達成が求められています。これは非常に難しい課題であり、それを解決するための方策として最近では、社会的責任経営(CSR)が注目を集めています。実際、株式市場においてはCSRを意識した経営を行っている企業を主体に投資する社会的責任投資(SRI)が着実に増加しています。

CSRは、利益の一部を社会貢献事業に寄付するという伝統的なフィランソロピーとは大きく異なっています。消費者における環境保全意識などが高まるなか、社会的に有用とみなされる活動に従事していなければ、どんなに優れた商品やサービスを提供したとしても、そういった企業の生き残りは困難と考えられます。その一方で、企業の側からみた場合、CSRを積極的に採り入れれば、将来の危機を回避したり、新しい市場を創出したりすることができるという利点があります。
末永 國紀

末永 國紀

経営にかかわる基本理念のない企業というのはありえません。「人はパンのみに生くるにあらず」と聖書が説くように、誰しも生活していくためにのみ働いているわけではないからです。自らの仕事が何らかのかたちで社会的な意義を持っていると考えられるからこそ、頑張れるのではないでしょうか。企業の場合も、同じです。たとえ営利の追求を目的にしたとしても、その利益に社会的な正当性がなければ、たちまち内部告発が避けられません。この企業経営における社会的正当性の重要性は、数々の企業不祥事が近年、多発していることからみても明白ということができます。

それでは、CSRというのは、21世紀において突如浮上した経営面での課題なのでしょうか。答えは「否」です。実は、近江商人とよばれる人々は江戸時代から営利活動における社会的責任に気付いていたのです。売り手よし、買い手よし、世間よし、という彼らの「三方よし」という考え方は、利益の正当性を主張するための基本理念ともいえるものです。

温故知新。経済史は古文書を読んで、歴史的な事実を解明するだけにとどまりません。歴史的事実を踏まえて、現在および将来についても論じることも求められているのです。営利活動のなかに高い倫理性を生み出した近江商人に代表される日本の商家の理念を探求し、そうした事実とこれからの企業のあり方とを接合的に考察することもひとつの接近方法です。こうした観点から日本経済の歴史を一緒に勉強しませんか。

末永 國紀末永 國紀
同志社大学経済学部 名誉教授
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