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教員の現代経済ウォッチング

Vol.42 人を考え、社会(まち)をつくる

東日本大震災後ほどなくして、値上げに対する懸念や買い占め防止のメッセージが繰り返し流されている。そして実際に、さまざまなモノが店頭から消えた。直線距離で陸前高田市から約400km、福島第一原発から約200km離れた東京の店舗でさえである。

「モノの値段は買いたい量と売却(できる)量のバランスで決まる。 何らかの要因で買いたい量が売却(できる)量を上回れば、値段は上がる。」
小藤 弘樹

小藤 弘樹

このことは、高校や学部1年生で学ぶ。いな、わざわざ授業・講義で学ばなくても、多くの人が経験的に知っている。阪神・淡路大震災を回顧する必要などない。この10年足らずの間にも、新興諸国の経済成長と食料需要の拡大、天候不順による不作などで、資源・食料品の値段は上がった。また、インターネットのオークション・サイトでは、値段が上がっていく様相を垣間見ることができる。

この場で、市場の役割やその限界について論ずるつもりはない。まして、価値観や倫理観などを押し付ける気も毛頭ない。ただ、これからあるいはいま、学部で経済学を学ぶ人たちに、いま少し考えてほしい問題がある。

震災発生から連日、「未曾有」「戦後最多の死者・不明者」といった言葉に加えて、政府や専門家らの「想定外」「予断を許さない事態」「いつまで続くかわからない」といった言葉が飛び交う。さらに、食糧や水など生命にかかわるモノに関する制限等が実施されている。そのなかで、自らのあるいは守りたい人たちの命を守るべく奔走し、さらなる状況悪化に備えて普段以上にモノを買う(買えた)人がいる。彼らの行動は、値段の上昇圧力を増し、混乱をきたしかねない「悪行」なのだろうか。

パン、レトルト食品、飲料…。これらを飲食しようとスーパーマーケットやコンビニに訪れるたびに、値段交渉してきた人はほとんどいないだろう。しかし、その値段も概ね「人」が決める買いたい量と売却(できる)量で上下していた。企業や団体など「組織」が提示する量も例外でない。組織の目的・目標を定める「人」、目的・目標を達成するために決断する「人」がいるのである。もちろん、「人」がすべてを操作できるわけではない。モノの値段、とりわけその動きは、そうした側面を含めて「人」の一側面を映し出している。

経済学の書物をひもとけば、株価、利潤、国内総生産(GDP)など「金」にかかわる用語、その決定メカニズム、それらを用いた経済現象の説明・政策論などが並ぶ。しかし、そこに記されているのは「人」であり、人の生活の場「社会(まち)」をつくるためのアイデアなのである。


小藤 弘樹小藤 弘樹
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