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教員の現代経済ウォッチング

Vol.43 京都市の文化政策における一つの課題-鑑賞者開発という視点

京都の文化的豊かさは、国内外を通じて広く知られるところである。神社・仏閣といった歴史的建造物と庭園、彫刻や絵画などの芸術作品から、そこで催される行事の数々、能楽、舞、雅楽などの古典芸能、茶道や華道などの生活文化、そして人々の暮らしに息づく京都独特の生活美に至るまで、枚挙にはいとまがない。これらの中には、京都市の文化政策における重点的対象として何らかの支援を受けているものもあれば、特に支援の対象にはなっていないものもある。
河島 伸子

河島 伸子

文化政策を正当化する理論としては、「その卓越した活動・遺産が、市場システムの中だけでは生き残ることができないため、政府が介入する」という考え方が最も重要なものである。さて、文化政策には、もう一つ、重要な基本的考え方、目標がある。それは、「優れた文化をなるべく多くの人に共有してもらうこと」である。誰もが等しく全ての文化的ジャンル、活動に常にふれていなければならない必要は、もちろんないのであるが、せっかくの優れた文化的所産物があるのであれば、それをなるべく人々にとって近づきやすい形に持っていくこと、さらに既にそれにふれている人々にとっての経験、文化との関わりがより深いものとなるように工夫することは、重要な政策課題であると言える。このような政策領域を私は「鑑賞者開発」と呼んでいる。

文化鑑賞をするかしないか、は最終的には個人の自由であるが、意思決定における自由を保障し、その幅と機会を最大化するためには、構造的なバリアを取り除いていかなければならない。中でも文化の中身そのものというバリア、鑑賞すべき文化の内容やそのイベントの場でのふるまいに関する知識がないことからくる不安、恐怖といったバリアは、見えにくいが、除去していかなければならない。鑑賞者開発に取り組み、普段とは違ったタイプの観客にも接していくことは、文化団体、アーティストにとっても大きな刺激となるはずである。通常であれば当然と考えていたことに対する挑戦があり、活動の意味そのものを問われるかもしれないので、鑑賞者開発は彼らにとって不安をもたらすこともある。しかし、そのようにして揉まれることにより、文化的な質の向上も望めるであろう。

こうしてみると、鑑賞者開発という文化政策の目標は、最初に述べた「文化の質的向上」という文化政策における第一の目標にも沿うと言えるのである。

河島 伸子河島 伸子
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