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教員の現代経済ウォッチング

Vol.45 交通と時間

我々が何かをしようとすると、人・物・情報のいずれかの移動、すなわち、交通という行動が必要になる。学校教育を受けるには学校へ通学しなければならない。空腹を満たそうと思えば、食材や弁当を買いにスーパーやコンビニへ行くか、レストランへ食事に出かけなければならない。宅配ピザを利用するにしても、注文の電話(情報の移動)とピザの配達(物の移動)が必要である。交通は、目的を実現するための手段としての役割を担う。

教育や飲食という実現したい目的に対する需要が本源的需要であるが、それらを実現する手段である交通に対する需要は派生需要といわれる。その場合、交通そのものからは満足(効用)はもたらされない。効用は、教育などの本源的需要の充足によってもたらされる。鉄ちゃんや鉄子さんが「乗り鉄」として鉄道を利用する場合のように、本源的需要といえる交通需要もあるが、多くの交通需要は派生需要である。
徳岡 一幸

徳岡 一幸

一方で、交通を行うには費用がかかる。運賃やガソリン代などの金銭的費用と、移動に要する時間である。経済学は、選択したものの費用をそのために犠牲にしたものの大きさで捉え、機会費用と呼ぶ。「時は金なり」と言われるように、時間にも機会費用がある。1時間かけて通学する人がこの1時間でアルバイトをして1,000円稼げるなら、この人は通学という交通行動で1,000円を稼ぐ機会を犠牲にしたことになる。したがって、この人が通学に費やす1時間の機会費用は1,000円である。

交通の分野では、移動時間は、単位時間当たりの機会費用を意味する時間価値を用いて貨幣換算され、時間費用として捉えられる。交通手段の選択は、利用者が負担する金銭的費用と時間費用(これらの合計を一般化交通費用という)に基づいて考えるなら、運賃は安いが速度が遅く時間のかかる手段を選ぶか、運賃は高いが速くて時間のかからない手段を選ぶか、という問題になる。派生需要としての交通は効用を直接にはもたらさないので、少ない費用で実現できる交通ほど望ましい。すなわち、一般化交通費用が最も少ない交通手段を選ぶことが賢明な選択である。

時間の機会費用が、同じ時間働いて得られたであろう賃金の大きさで評価されるなら、賃金が上がるほど時間費用は増大し、一般化交通費用に占めるウエイトも大きくなる。すると、人々は移動時間をできるだけ少なくしたいと思うだろう。高速道路を走る車が増え、新幹線やジェット機の乗客が増えたのも、経済の成長に伴い所得が上昇したことで、人々がより速い交通手段を求めるようになったからである。また、大阪の芸能人が東京で売れ出すと住いを東京へ移すのは、時間費用を節約するための究極の選択とみなすことができる。

徳岡 一幸徳岡 一幸
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