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教員の現代経済ウォッチング

Vol.46 経済的豊かさと教育

国立社会保障・人口問題研究所によると2050年ごろには日本の人口は9000万人を割り込むまで減少するといわれています。また、その間に高齢者数が1000万人以上増加する一方で、労働力人口は3500万人超減少するといわれており、日本経済の将来ついての大きな懸念材料となっています。

労働力率(=15歳以上の人口に占める労働力人口の割合)の低下によって国民の経済水準が低下してしまうのを防ぐには、一人の労働者が造りだせるモノの量が労働力率の低下を上回る速さで増える必要があります。つまりは優れた技術を開発できる優秀な人材とそれを使いこなすための知識や技能を身につけた人材とを育てていかねばなりません。はたして今の大人世代はそのための環境整備という責任を十分に果たしているといえるでしょうか。
四谷 晃一

四谷 晃一

子どもの数が減り続ける中、大学生の数はここ20年ほどほぼ一貫して増加し続けており、最近では高校卒業者の2人に1人以上が大学(短大を含む)へ進学しています。ただ、その一方で彼らの学力が学歴に見合ったものではないという指摘も多くなされています。推薦入学制度の多用や(曖昧な名前の)新学部の設立など大学はその門戸を拡げ続けていますが。それは子どもにとって利するものになっているのでしょうか。一般に、選択の幅が広がれば効用は増えますが、そのためには情報が正確かつ完全に伝達されていなくてはなりません。全てがそうとはいいませんが、大学側からの情報が十分でないことがかえって受験生や保護者の需要を誘発しているという側面があるように思えるのは私だけでしょうか。

義務教育についていえばいわゆる「ゆとり教育」が若者の教育機会を狭めたことは確かでしょう。大竹文雄氏(「高齢化・所得格差・教育問題」、西村和雄他編『拡大する社会格差に挑む教育』所収)によれば「ゆとり世代」が小中学校で受ける授業数は、主要5教科でみた場合、最も多かった年代に比べ約17%も減少しており、年数に換算すると約1年半教育年数が短縮されたことになるそうです。不足分を補うに足る教育費を捻出できない家庭の子どもの学力が低下し、それが格差の再生産と拡大を招く恐れがあることは広く議論されているとおりです。先日、厚生労働省が発表したところによれば「子どもの貧困率」は過去最悪の15.7%となっています。「貧困率」の解釈については諸論ありますが、教育費の捻出が困難な家庭で育つ子どもの割合は上昇傾向にあるといえるでしょう。そんな中で、子ども一人当たりの公的教育費が減少している点には多少なりとも疑問を感じます。

経済の縮小が懸念される中、経済的な豊かさだけを追求するという価値観から脱却すべきであるという意見も多方面から出ています。自然環境や資源を保護し持続可能な社会を維持するという観点からならば理解できますし、また物質的な部分以外から充足感を得られる心の豊かさが大切という考えにも共感します。しかし、こうした意見を経済水準が低下してしまうことのスケープゴートにしてはなりません。大人世代は多様な価値観を提示することと並行して、高い経済水準も十分達成可能となるよう教育環境の整備に努め、そのうえで何をどの程度追求するかという選択を次の世代に委ねるべきでしょう。もし仮に、経済的豊かさという選択肢がなくなったことを価値観を変えることでうやむやにしようとするようなことがあったならばそれは本末転倒です。その意味でも、今後の教育の在り方が問われているといえるでしょう。

四谷 晃一四谷 晃一
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