こちらに共通ヘッダが追加されます。
  1. 経済学部/経済学研究科ホーム
  2.  > 教員の現代経済ウォッチング
  3.  > Vol.57 人間の住む都市

教員の現代経済ウォッチング

Vol.57 人間の住む都市

「都市」というと、高層ビルが立ち並ぶ風景や、多くの車が走る光景、スーツを颯爽と着こなして働く人々の姿といった、経済活動の集中している地域としてのイメージが湧くかもしれません。確かに都市にはそういう側面があります。一方で、「都市再生」という言葉をよく目にします。これには、生活の「場」としての都市を再生させようという意味合いが込められています。この「都市再生」を巡る問題は、経済学をはじめ、さまざまな分野の研究者によって議論されています。

では、生活の「場」とはどういうイメージなのでしょうか。
奥田 以在

奥田 以在

私には哲学者である鷲田清一氏の言葉が印象に残っています。彼は「人間の住む街」について、「明るいところもあれば、薄暗い場所もある。あるところでは時間が規則的に流れ、ある場所ではよどんでいる。ヒヤッとしたり、なごんだり、皮膚感覚のある『述語』で作られた、いろんな場所があり、いろんな時間がある。さまざまな次元や時間の混在が都市の分厚さをつくるんです」(鷲田清一著『新編 普通を誰も教えてくれない』筑摩書房、2010年、77ページより引用)と述べています。人間を包み込むような、人間臭い都市の姿が想像できる言葉だと思います。

例えば、かけっこをしたり、かくれんぼをしたりする子どもの姿。ものづくりをする職人や、それに憧れる子ども。近所の子どもを叱りつけるおじさんや、お菓子をあげる町内のおばちゃん。豆腐の行商の「パープー」という音や炊事の臭い。町全体がざわつき、心が沸き立つ祭。前を通るのが気恥ずかしい、ちょっと大人の空気が漂う地域。こういったものを内包した、さまざまな人々が生活を送っている都市のイメージが湧いてきます。

しかし、ここに書いたイメージは、どこかノスタルジックで現代的ではないように聞こえるかもしれません。たしかに、子どもはゲーム機を持ち運んで友達と遊んでいます。職住が分離して通勤のサラリーマンが増えました。大型のスーパーに行けばたいていのものは揃いますし、コンビニエンスストアでは24時間、食べ物から日用品まで買うことができます。そして、インターネットの先には膨大な情報と商品、そして友人が待っていて、町内の人とつきあわなくてもある程度楽しく過ごせます。

われわれがこのような便利さや気楽さを享受する一方で、近隣の商店街がシャッター街へと変貌したり、駐車場やマンションができて子どもの遊び場であった路地が減少したりしています。近所づきあいが減ってきたということも問題視され、コミュニティ再生の動きも起きています。では一体、どのような都市のかたちやコミュニティのあり方がわれわれにとって心地よく、また持続可能なのでしょうか。どこにバランスがあるのでしょうか。これは、現代の都市が抱えている大きな問題のひとつです。経済社会のあり方や、人間という存在について考え、歴史に学びながら、われわれが安心して心地よく暮らせる都市とは何か、今後も模索していかねばならないと思います。

奥田 以在奥田 以在
専任教員紹介 
.