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教員の現代経済ウォッチング

Vol.6 経済学と公害・環境問題

日本だけでなく、世界各地がさまざまな環境問題で埋め尽くされている。アスベスト公害、大気汚染、食品汚染、森林荒廃、砂漠化など、枚挙にいとまがない。兵庫県尼崎市などでは、アスベストの吸引によって既に多くの死者と発病者が出ているが、これまでの被害は氷山の一角に過ぎず、全貌はむしろ今後数十年の間に明らかになるはずだ、ということがわかっている。同志社大学でも多くの建物の一部にアスベストがかつて使われており、つい最近ようやく全部が撤去されたばかりである。

こうした環境問題については、人間の経済活動に原因のある場合が多い。このため、経済学には比較的新しい研究分野として環境経済学がある。私もこの分野を研究分野の一つとしている。
室田 武

室田 武

ほとんど同じ品質で量も同じ商品が複数あるとき、多くの人々は値段(価格)の一番安いものを買うであろう。経済学の初歩ではそのように教える。そして、それで何の問題もないことが多い。しかしその一方で、「安かろう、悪かろう」という表現があることも忘れられない。アスベスト公害を例にとると、電気絶縁性や断熱性を持つ物質はいろいろある。ただし、そうした物質のなかでアスベストは安価に輸入できるものであった。そこでさまざまな企業が建物や設備にそれを使ったのである。こうして、安上がりの建物や安上がりの設備ができた。その結果、被害は広がり、撤去に踏み切れば踏み切ったで、今度は危険な撤去作業にたいへんなお金がかかることになった。

日本史をたどれば、明治時代に起源のある北関東の足尾銅山煙害・鉱毒事件がある。既に操業を停止している銅山だが、亜硫酸ガスによって裸になった山々には、21世紀の今なお緑が完全にはもどっていない。このため、多額の国費やその他のお金を使って植林活動が続いている。小学生も含めて多くのボランティアの人々も植樹に努めている。

足尾の悲劇やアスベスト惨禍を繰り返さないためにはどうしたらよいかを考えるのも、経済学の課題である。

室田 武室田 武
同志社大学経済学部 名誉教授
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