学部長ご挨拶
私たちはいま、情報革命という大きな時代の転換点に立っています。生成AIの登場によって情報技術の進化はさらに加速し、利便性が高まる一方で、その急速さゆえに不安の要因にもなっています。さらに地政学的リスクなど不確実性が増すなかで、社会の動きを読み解き、より良い未来を構想するための学問として、経済学の重要性はいっそう高まっています。
経済学は、政治・法・社会・歴史・経営・環境・心理・哲学など多様な学問領域と交差し、それらへの導入ともなる学問です。加えて、理論と実証を基盤とし、数学、統計、情報といった理系分野とも深く結びついています。したがって、在学中の前半に経済学を集中的に学ぶことは大きな意味を持ちます。そこで得た知見をもとに、後半で関心ある隣接領域を探求することで、皆さんの将来の歩みに確かな厚みと広がりが生まれることでしょう。経済学部では、皆さんのそのような学びを多方面から支援してまいります。
さて、時代の転換点といえば、日本の政治体制が刷新された明治維新(1868年)のころ、本学の創立者新島襄はすでに米国アーモスト大学に学んでおり、日本人として初めて海外で学士号を取得した人物です。1875年には、その経験と志を胸に、現在の同志社大学の前身となる同志社英学校を設立しました。1890年、新島は遺言において、同志社教育の目的を「精神、活力あり、真誠の自由を愛し、もって邦家に尽くすべき人物を養成する」と述べています。1821年の創立以来、リベラルアーツ教育の伝統を誇るアーモスト大学。その校訓 "Terras Irradient"─Let them enlighten the lands─もまた、新島の精神と深く共鳴しています。
本学に脈々と受け継がれてきたこの自由主義の精神は、現代を生きる私たちにも重要な示唆に富んでいます。自由人の旺盛な好奇心は、他者との出会いへ踏み出す行動力を生み、その過程で自らを知り、使命を考える契機を与えてくれます。しかし多様で変化の激しい時代にあって、その歩みを実りあるものにするためには、他者への共感力や自らを律する精神力に加え、自由人のための諸技術(リベラルアーツ)としての教養を深めることが不可欠です。教養は、問題に向き合う際の視点や価値判断を形づくり、自分らしさを育む土台となるものです。
在学生の皆さんが、経済学をそのような学際的な視点で捉え、知的探究に邁進し、そしてその先に「一国の良心」ともいうべき真の自由人として社会で活躍されることを心より願っています。

同志社大学経済学部・経済学研究科長
東 良彰