佐藤 敦紘
専任教員紹介
佐藤 敦紘 SATO Atsuhiro

研究テーマ | 信用財と専門家の行動に関する研究 |
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研究室 | 良心館474号室 |
演習(ゼミ)紹介 | ゲームの理論と実験,行動経済学 |
詳細 | 研究者データベース(オリジナルサイト) |
世の中には専門家と呼ばれる職業がいくつもあります。専門家と呼ばれるだけあって、一般の消費者と専門家の間の情報の非対称性は顕著です。もし専門家が不正や虚偽を働いたとしても、それを消費者が見抜くのは容易ではありません。ある研究によると、スイスのチューリッヒでは、歯科医の診断のうち28%が過剰な処置を奨めるものだったそうです。別の研究では、アテネのタクシーで土地に不慣れな観光客を装って乗車した場合、地元民を装った場合に比べて、目的地まで2倍もの距離を遠回りされたそうです。
不正を働く専門家がいるのも事実でしょうが、消費者に対して常に誠実に向き合う専門家がいるのも事実でしょう。では、専門家の行動を隔てるものは何なのでしょうか?環境や制度によってそれは変わるのでしょうか?どんな市場にどの程度の不正が潜んでいるのでしょうか?専門家による診断や処置のように、消費者が事後的にもその品質を判別するのが困難な財は信用財と呼ばれます。私は上記のような疑問に向き合いながら、市場の競争度、取引の頻度、専門家と消費者の選好などの要因が専門家のインセンティブに与える影響に注目して、信用財の理論的な研究を続けています。昨今ではヨーロッパを中心にラボやフィールドでの実験が信用財研究の潮流となっているため、国内外での実験にも関心をもっています。
学生へのメッセージ
「経済学って何?」「経済学を学ぶと何が身につくの?」といったありきたりな質問に対しても誠実に向き合い続けてください。そうすればおのずと経済学への関心や理解は深まっていくはずです。それと、貴重な京都での学生生活を満喫してください。
演習(ゼミ)
演習テーマ:ゲームの理論と実験,行動経済学
お互いの選択が影響を及ぼしあう状況を分析するために,ゲーム理論は現代の経済学に欠かすことのできないツールです。経済学だけでなく様々な科学分野で応用されていますし,ゲーム理論を活用すれば人間関係や就職活動など身の回りの事象も経済学的に考察できます。
この演習では実験を交えてゲーム理論に関連する複数のトピックを主体的かつ協同的に学びます。ゼミ生には被験者として実験に参加してもらいます。私が進行する実験もあれば,ゼミ生自身に準備して進めてもらう実験もあります。それらの実験結果と従来の理論が示す結論との間には大なり小なり違いが現れるはずです。その理由を議論するために行動経済学も扱います。伝統的な経済学に比べてより現実的な人間像を考える行動経済学を学べば,実験結果と整合的な発見があるかもしれません。
ゲーム理論や行動経済学に関心のある人はもちろんですが,ゲームや実験という言葉に惹かれる人,相手の心理を考えるのが好きな人など,多様な学生に集まってほしいと願っています。そうであれば興味深い実験結果を得られ,議論も盛り上がると期待できるからです。そのためにも当初は多くを望みません。演習の活動を通じて,①主体性や協同性を向上させる,②既存の理論に対して疑問を抱く,③問題を明らかにして考察する力を身につける。以上がこの演習の目的です。
2年次演習 |
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主に戦略型ゲームを扱います。序盤では,教員が複数のゲーム実験を主導し,その理論を簡潔に解説します。その後,ゼミ生はグループに分かれ,担当になったゲームの実験結果を分析して資料にまとめ,報告・議論・審査します。後半は,それまでの反省や実験の問題点を踏まえて,ゼミ生自身で担当のゲームの再実験を行い,再実験の結果について報告・議論・審査します。冬季合宿では,オークションまたはマッチングの実験を行います [履修条件] |
3年次演習 |
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(春学期)主に展開型ゲームを扱います。進め方は2年次演習と同じです。夏季合宿では,オークションまたはマッチングまたは繰り返しゲームの実験を行います。
[履修条件] |
卒業研究 |
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演習テーマと多少なりとも関連があれば,卒業論文のテーマは自由です。もしテーマを見つけるのが難しければ,これまでにゼミで扱った内容を参考にして,より多くの被験者を集めた実験を主催してみるのも良いでしょう。 [履修条件] |
関連する科目
既修・併修を強く勧める科目
- 初級ミクロ経済学Ⅰ・Ⅱ
- 統計Ⅰ・Ⅱ
- ゲーム理論
既修・併修が望ましい科目
- 行動経済学
- 中級ミクロ経済学1・2
- 計量経済学1・2
履修を勧める3年次演習関連科目