横井 和彦
専任教員紹介
横井 和彦 YOKOI Kazuhiko

研究テーマ | 経済の「グローバル化」と中国経済 |
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研究室 | 良心館563号室 |
演習(ゼミ)紹介 | 経済の「グローバル化」と中国経済 |
詳細 | 研究者データベース(オリジナルサイト) |
私の研究は、米中経済関係を焦点として、中国の「経済のグローバル化」による経済発展について検討することです。
現在の世界は、いわゆる「経済のグローバル化」が進展しています。「経済のグローバル化」とは、基本的には資本(=企業)が国と国との間を移動することをさします。
「経済のグローバル化」が進んだ今日では、米中貿易「戦争」、あるいは摩擦のような国を対象、あるいは国を単位とした関税という手段は、全く意味がないどころか、害悪となるだけです。すなわち、本来貿易「戦争」に、勝ち負けなどはないのです。
仮にあるとすれば、アメリカが「勝つ」ということは、貿易赤字が減るということになるでしょう。2023年には確かに減り、「勝った」かのようにみえますが、実はそうではなく、2020年の米中「第一段階の合意」があったからこそ赤字が減ったのであり、関税という形では問題はまったく解決しなかったのです。
2025年1月、トランプが再びアメリカ大統領となり、さっそく中国からのほぼ全ての輸入品に対して追加で10%の関税をかけると表明しました。しかしそれは大きなブーメランとなって帰ってきて、結局自分の首を絞めるだけとなるでしょう。
とはいえ、近年の感染症の流行とそれに伴う景気の低迷、米中関係の悪化などから、これまで中国に進出していた多くの国の企業は、生産体制の見直しを迫られ、各国政府もそれを後押ししています。私は、米中関係の変化に伴うサプライチェーン(供給網)の構図の変化を焦点として、中国の経済発展について検討しています。
学生へのメッセージ
諸君よ、もし理論をもって是非を判別せんと欲せば、決して難しきにあらざるなり。しかれども諸君よ、願わくばその理論に愛の油を注ぎ、もってこれを考えよ。(森中章光編『新島襄 片鱗集』より)
演習(ゼミ)
演習テーマ:経済のグローバル化と中国経済
かつて日本経済は、日本企業が国内で生産した製品を欧米へ輸出するという「経済の国際化」で発展しました。「経済の国際化」とは、財(商品)とお金(代金)だけが国と国との間を行き交うことを指します。
そして輸出拡大で貿易黒字が増え、とくに米国との貿易摩擦が激しくなると、円が切り上げられて日本製品の価格が高くなるように仕向けられました。1971年に円の切り上げが始まり、1973年には変動為替相場制に移行しました。円高による製品価格の上昇で困るのは日本企業だけなので、円高は急激に進行しました。
一方、中国も経済発展にともなって輸出が増え、今や世界第1位の輸出大国です。けれども輸出の3割(金額ベース)は外資企業が中国国内で生産した製品です。中国の経済発展が、「改革・開放」で経済特区、経済技術開発区、開放都市、高新技術産業開発区を設けて外資企業を受け入れるという、「経済のグローバル化」によるものだからです。「経済のグローバル化」とは、資本(企業)が国と国との間を移動することを指します。したがって、元の切り上がりで製品価格が上昇して困るのは中国企業ではなく、中国に進出した外資企業なので、かつての円のような急激な切り上げはなかったのです。
日本が「経済の国際化」で経済発展するにつれて、とくに米国との間で貿易摩擦が激化しました。さらに、円の変動為替相場制への移行で円高基調となりました。けれども日本企業は、より低価格で高性能・高品質な製品を開発、輸出することで発展し続けたのでした。
そこで1982年、ホンダが日本企業で初の乗用車の米国現地生産を開始しました。これが日本の経済発展が「経済の国際化」から「経済のグローバル化」へと転換する先駆けとなりました。そして1985年のプラザ合意によって円高が決定的となると、日本企業の海外生産が加速しました。折しも「改革・開放」によって外資受け入れを推進していた中国がその受け皿となったのでした。
今日の中国経済は「経済のグローバル化」の方向性の転換を迎えています。すなわち2023年の対外直接投資額(フロー)は前年比8.7%増の1,772億9,000万ドルでした。米国、日本に次ぐ世界第3位です。他方、対内直接投資(ネット)は前年比81.7%減の330億ドルに急減しました。この資本の流れの変化が、中国企業のグローバル化を決定づけるといえるでしょう。
このように日本経済の歴史をふまえながら、「経済のグローバル化」という経済発展の原動力に注目して、中国の経済や企業について考えていくのがこのゼミの特徴です。
2年次演習 |
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三橋貴明『中国不要論』(小学館新書)を手がかりに、既存の経済学の視点だけでは現在の中国経済を正確にとらえることができないことを学びます。 [履修条件] |
3年次演習 |
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春学期には田代秀敏『中国経済の真相』(中経出版)を手がかりに、筆者の言う「通説」と「真実」を検討しながら、既存の経済学の視点だけでは現在の中国経済を正確にとらえることができないことを学びます。 [履修条件] |
卒業研究 |
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中国経済に関するテーマで卒業研究をまとめようと考えている学生を対象とします。 [履修条件] |
関連する科目
既修・併修を強く勧める科目
- 経済学の歴史
- 中国経済
- 経済史
- 中国経済史
既修・併修が望ましい科目
- アジア経済
- 政治経済学1・2
- アジア経済史
関連する演習
学生による「私のゼミ紹介」
横井ゼミをひと言で表すとしたら、それは「自主自立」ではないでしょうか。ゼミはとにかく自由であり、自主性が重んじられています。ゼミのメンバーは中国出身、体育会所属、大規模サークルのリーダーなど多様で個性的メンバーが属しています。そのためゼミの中ではお互いの価値観を共有し、文化の違いにも気付かされた貴重な機会でした。
ゼミでは2年次では中国経済についてグループワークと発表を主に行いました。3年次ではグループごとに対中ビジネスバーチャルカンパニーを企画・運営し、最後には名城大学経営学部田中ゼミとの合同ゼミで発表しました。中国の文化や経済の造詣を深めた上で実際にビジネスを自ら発案し経営計画を立てるところまで高度なスキルを身につけることができました。
横井ゼミでは横井先生のもとで皆充実した学生生活を過ごせていると感じています。ゼミが終わってからメンバーでご飯に行ったり、そこでは普段話せないことを相談し勇気を貰ったり、横井先生のお人柄には感服しました。コロナで制限されていた分、ゼミではそれを取り戻すかのように活発に交流させていただき感謝しかありません。メンバーそれぞれ進路が違いますがまた集まりたいと思えるような最高のゼミでした。
(高島大介)