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2022年度のレポート(古都奈良の再構築と「まち」再生)

学生ケーザイレポート(2022年度)

古都奈良の再構築と「まち」再生

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 本プロジェクトでは、「奈良県の林業と地域の再構築~吉野林業の再興~」というテーマで研究を行った。
 奈良県川上村は、奈良県南東部に位置する村であり、吉野林業地帯の中心地である。2020年の総人口は1,156人であり、減少率は全国市区町村の中で114番目に大きい。この川上村と吉野林業には、吉野の大自然と人々の知恵・努力が育んだ2000年の歴史がある。吉野の木材は、実際に大阪城や伏見城にも用いられているなど、古代から建築用材として重宝されてきたことがわかった。
 このような歴史的背景を持つ吉野材の特徴には、製材としての強度や樽丸材に使われるような香りの良さが挙げられる。それに加え、近年では、抗菌効果やウイルス抑制効果など人体の健康に影響を与える効果があることが実証されている。また、ウッドショックやウクライナ侵攻、円安等の世界情勢を鑑みると、海外木材の輸入が困難な状況であり、国産材に対する需要の高まりに可能性があると考えた。
 そこで私たちは、奈良県川上村の現状分析と課題抽出を行い、さらに川上村へのフィールドワークも実施した。その結果、吉野林業を再興するにはサプライチェーンとデマンドチェーンを繋げる必要があることがわかり、「公共の施設への木材利用」という施策の提案に至った。それにより、林業経営者は高付加価値な商品としての活用による利益創出、利用者である子供には健康に良い環境での成長や学習効率の向上という効果が期待される。また、木材活用によって公益的機能・多面的機能の向上や地球環境保全効果、アメニティとしての役割などの意義を持つと想定している。
 奈良県川上村は、林業において歴史と技術を持ち合わせた地域であるからこそ、その能力を十分に発揮できるようなシステム構築が必要であると考えた。今回の研究で経験した地域の捉え方や課題解決の手法を、他地域や日本全体にも当てはめ、今後の地域の在り方を追求していきたい。