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2023年度のレポート(治水と生態系の保全の両立~球磨川の荒瀬ダムの事例から学ぶ~)

学生ケーザイレポート(2023年度)

治水と生態系の保全の両立~球磨川の荒瀬ダムの事例から学ぶ~

本プロジェクトは、「荒瀬ダム撤去による影響と今後の治水を担う遊水池」というテーマに研究を進めた。荒瀬ダムは、日本最大急流の1つである球磨川に建設された、発電専用ダムで、昭和29年に発電を開始した。当時はその発電量が県内電力の約16%を占めており、50年以上にわたり電力を供給してきたが、電力に占める割合の低下や水質悪化などによる地元からの撤去要望を理由に、2012年に撤去が決定し、2018年3月に撤去作業が完了した。そこで私たちは国内で初めてダムが撤去された熊本県に行き、荒瀬ダム撤去が地域住民、生態系、産業などに与えた影響について調査を行った。その結果、ダム治水が引き起こした水害や河川形態の破壊についてなど、生態系に及ぼすダムの問題について知ることができ、ダム治水による生態系への影響を理解した。そこで私たちは、ダムによる治水の代替案として遊水池が有効なのではないかと仮説を立てた。遊水池とは、洪水時の河川の流水等を一時的に貯留させる土地のことで、悪臭や振動がなく、生態系に好影響を及ぼし、冠水時に農業共済の補償があるといったメリットがある。そして遊水池は、治水だけでなく、生物多様性の保全や、子供や障害のある若者へ体験・経験の提供など、多目的機能がある。事例として、静岡県にある麻機遊水池が挙げられる。遊水池内には、散策路や芝生広場、複合遊具の他に野鳥の観察小屋などがあり、多くの植動物が生息する貴重な湿地として、環境省のウェットランド500に指定されている。また、台風による影響としても、ダムよりもはるかに遊水池の方が洪水調節効果も高く、通常時は住民の憩いの場として、洪水時は遊水池として機能を果たしている。以上より私たちは、ダムの代替案として、治水・生態系の面で遊水池は有効であると結論を出した。