2023年度のレポート(限界集落脱出を遂げた産業発展のヒント-長野県川上村に学ぶ-)
学生ケーザイレポート(2023年度)
限界集落脱出を遂げた産業発展のヒント-長野県川上村に学ぶ-

本プロジェクトでは、実際に限界集落脱出を成功させた長野県川上村に焦点を当て、発展のカギとなったレタスをはじめとする高原野菜産業について研究を進めてきた。研究を通して、現在日本で問題視されている限界集落において適用できる発展要因を探ることが目的である。
限界集落とは、過疎化や高齢化が進行したことで集落人口に占める65歳以上の人口が半数を超えた集落のことを指す。この問題は空き家の増加や治安悪化を引き起こす可能性がある。
川上村の農業による年収は他地域と比較すると、大差をつけて高い年収を有する。その大部分を占めるのがレタス栽培であり、一大産地として有名である。では、なぜ以前は限界集落であった川上村が大きな発展を遂げることができたのか。それは、歴史的背景と出荷・共販体制の確立、外国人労働者の存在という3つの要因にあった。歴史的背景には朝鮮戦争に伴う戦争特需に由来し、レタス栽培始動の原点となった。集荷と共販体制の確立という点では都市部や海外に向けた新鮮野菜の安定供給と村内の組織化が大きく関係していた。また、外国人労働者においては積極的に雇用環境を作り、人手不足を補っている。これらの要因から川上村は高原野菜産業を飛躍させたことがわかった。
私たちは、外交人労働者の活用や国内需要に合わせた特産品の生産、供給拡大に活かせる地域内の組織化を他地域にも適用できる発展要因として結論付けた。しかし、川上村の発展は立地の良さや国内外の需要増加など恵まれた経緯も大きいため、限界集落脱出の参考でしかない。
今後の課題としては、川上村の特異性を排除した他地域に適用できるかの検討と本研究で着目した外国人労働者の雇用環境の詳細な調査だ。今後どのような産業発展への道筋が限界集落脱出の糸口になるのかさらに考えていきたい。