このページの本文へ移動
ページの先頭です
以下、ナビゲーションになります
以下、本文になります

2024年度のレポート(高知県の公共交通機関「とさでん交通」の経営再建策の検証と提案)

学生ケーザイレポート(2024年度)

高知県の公共交通機関「とさでん交通」の経営再建策の検証と提案

keizairepo2024_5.jpg     (113999)

 本研究では、2016年に成立した高知県の公共交通機関「とさでん交通」をモデルケースとして、近年頻発する災害と深刻化しつつある人材不足とに対する、公共交通の持続可能性について論じる事を目的に、定量・定性・編年の3つの視座に基づいて研究を行った。
 とさでん交通は、現存最古・軌道線最長の路面電車を保有する公共交通事業者であり、株主となった沿線自治体の協力の下、旧2社の競合下では整理できなかった不採算路線からの撤退などを行い、2019年度までは経営再建計画以上の黒字を達成していた。しかし、Covid-19による資金ショートの危機に伴い、経営状態が一時的に悪化していた。
 定量的分析では、全国民鉄協会加盟各社の過去15年の財務諸表との比較から、 Covid-19 や自然災害の如き外生的ショックに対する脆弱性が交通系企業全体にある事を示した。また人材不足に関しては、2030年代には乗務員が現在の僅か5%となるという推計がある事を明らかにした。
 定性的分析では、経営当事者へのインタビュー調査から、高速バス事業による内部補助が、人材不足により満足ならない状況にある事、災害対応の余力が無い事を明らかにした。
 編年的分析では、とさでん交通の前身となった企業が1940年代に直面したアジア・太平洋戦争と昭和南海地震を取り上げ、この際に関係各社からの人的・物的支援を受けた事を明らかにした。
 以上の分析から本研究では、とさでん交通を始めとする公共交通事業者の維持・存続には、非金銭的な部分での、人的・物的な連携が鍵であると結論付けた。
 本研究では、過去と現在との間で条件が完全に一致している訳ではない事や、具体的な提携施策の実現可能性についてまでは検討できていないが、今後更に深刻化するであろう人材不足と災害とに対して、平時の共同運行や非常時の人員融通に関する改善策を微力ながら提案した。