2024年度のレポート(急増する空き家問題の現状と空き家再生による解決策の考察)
学生ケーザイレポート(2024年度)
急増する空き家問題の現状と空き家再生による解決策の考察

大学による町家保全と地域連携への貢献
本プロジェクトでは、「大学による町家保全と地域連携への貢献」というテーマで研究を行った。
町家とは、建築基準法の施行以前に建てられた、町中にある店舗付きの伝統的建築物のことである。その代表的なものとして京町家がある。京町家は文化的・歴史的価値が高いにもかかわらず、近年、急速に消失している。実際、過去7年間で5,602軒が消失し、年間約800軒、1日あたり約2軒もの京町家が姿を消している。この現状を踏まえ、私たちは、大学などの学術機関が町家を積極的に活用することで、その保全と地域連携に貢献できるのではないかという仮説を立て、調査を開始した。
まず、同志社大学で過去に実施されていた「京町家異世代協同プロジェクト」の詳細を関係者に取材した。このプロジェクトは、同志社大学のボランティアサークルが町家を借り、地域の交流行事を行うものであった。京都の歴史的景観を活かしながら、住民同士の縦と横のつながりを再構築することを目的としていたが、支援金の枯渇により終了した。
次に、京都産業大学による「町家学びテラス」や龍谷大学の「深草町家キャンパス」など、京都内の他大学の町家活用事例を調査した。これらのプロジェクトは現在も継続しており、町家の活用を通じて町家の保全と地域社会の活性化に貢献している。
これらの事例を比較した結果、大学などの学術機関が町家を活用し、継続的な活動を行うためには、以下の3点が必要不可欠であると結論付けた。
1.教職員の関心が高く、利用者が多いこと
教職員が町家活用に積極的であり、大学内での認知度が高いほど、持続的な活動につながる。
2.確立された組織のバックアップがあること
活動を支援する大学内外の組織が存在し、財政的・運営的な支援を提供できることが重要である。
3.予算やリスクマネジメントの適切な管理
活動の継続には安定した資金調達と、建物の維持・管理に関するリスクマネジメントが不可欠である。
以上の考察を踏まえ、今後の活動では、まず教職員の利用を前提に、学生のニーズを反映した施設の提案を行うことが必要である。また、その運営を支えるための組織を確立し、持続可能な町家活用のモデルを構築することが求められる。最終的には、大学と地域社会が協力し、町家の文化的・歴史的価値を守りながら、新たな地域コミュニティの形成に貢献することを目指す。