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2024年度のレポート(銭湯を利用した地域活性化)

学生ケーザイレポート(2024年度)

銭湯を利用した地域活性化

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「銭湯を利用した地域活性化~奈良御所市からのアプローチ」

 本プロジェクトでは、「銭湯を利用した地域活性化~奈良県御所市からのアプローチ~」をテーマに、人口約2万人の小規模地域における銭湯の地域活性化効果を明らかにすることを目的に研究を行った。近年、銭湯は1968年の約18,000軒をピークに大幅に減少している。家庭風呂の普及や後継者不足、燃料高騰などが要因だが、最大の理由は公衆浴場としての役割の弱化にある。そこで我々は、銭湯が公衆浴場以外の価値を持つことで地域活性化につながる可能性を探った。
 まず東京都の稲荷湯に実地調査に赴いた。稲荷湯は、地域の公衆浴場としての役割に加え、長屋スペースでイベントを開催し、住民の憩い・交流の場としての役割も果たしていた。しかし、社会的価値だけでは十分な収益確保は難しく、存続には経済的価値との両立が不可欠であることもわかった。そこで、両立に成功している事例として奈良県御所市の「御所宝湯」を調査した。
 御所宝湯は、稲荷湯と同様に長屋スペースを活用した地域交流に加え、銭湯入り放題の特典付きで空き家を貸し出す「空き家再生」にも取り組んでいる。この仕組みにより、社会的価値を高めつつ地域資源を活かした新たな価値創出に成功している。
 さらに御所宝湯は、銭湯+サウナの平均客単価990円に加え、グッズ販売で月約45万円を売り上げている。加えて宿泊施設や飲食店の経営も行い、年間直接収益は約3,360万円にのぼる。御所市における「生活関連サービス業、娯楽業」の一社あたりの平均売上1,600万円と比較すると約2倍の規模であり、スモール経済圏での成功事例といえる。ただし、奈良市の同業種平均約3,400万円と比べると、突出しているとは言いがたい。
 以上より、御所市のような小さな地域においては、銭湯による地域活性化と経済効果が十分に期待できることが示された。ただし、今後はコストを含めた収益構造の詳細な分析が必要である。