2025年度のレポート(広島県から見るモノづくり技術が地域経済に及ぼす影響)
学生ケーザイレポート(2025年度)
広島県から見るモノづくり技術が地域経済に及ぼす影響
本研究は、広島県の歴史と現状の産業構造を分析し、持続可能な地域経済を実現するための方向性を検討したものである。広島は江戸期のたたら製鉄や呉の軍需工業を基盤に製造業が発展し、戦後は造船・鉄鋼・自動車産業を中心に高度経済成長を遂げた。特に1980年代以降はマツダを軸とする自動車産業へ大きくシフトし、県内製造業や関連企業の多くが自動車関連に依存する構造が形成された。しかしこの集中構造は、輸出依存や地政学リスクの影響を受けやすく、地域経済全体が単一産業の動向に左右されるという課題を抱えている。また国主導で既存産業を維持する政策が中心だったため、新産業を生み出す「0→1」の創出力が弱い点も問題として指摘された。
これらを踏まえ、本研究は「産業の多角化」を仮説として提示する。具体的には、自動車産業に加え造船業を第二の柱として育成することで、安定した製造基盤を形成できると考える。世界的に環境対応船や次世代燃料船の需要が拡大し、政策的にも造船復興の動きがあること、さらに広島は歴史的に造船技術と人材を蓄積してきた地域であることから、成長余地が大きいと分析されている。加えて、企業連携や産学官協働の強化、AI・ロボット導入による生産性向上、船舶保守分野の拡大なども発展要因として挙げられる。行政面では、2017年度開始の実証支援制度「ひろしまサンドボックス」により、企業や研究者がAI・IoT等の先端技術を社会実装できる環境整備が進められている。これは新規事業創出を促すイノベーション・エコシステム形成を目的とし、将来的には付加価値創出額5000億円規模を目指す構想である。
以上より、企業側の産業二軸化と行政側のイノベーション支援を両輪とすることで、広島は多様で強靭な産業構造を実現できると結論づけられる。