2025年度のレポート(行動経済学的ナッジと社会的信頼に関する実証研究-公共空間と地域社会を対象としたフィールド実験-)
学生ケーザイレポート(2025年度)
行動経済学的ナッジと社会的信頼に関する実証研究-公共空間と地域社会を対象としたフィールド実験-
本プロジェクトでは、エスカレーターの片側空け問題を解決することをテーマに研究を行った。このテーマに設定した理由は、私は資源が効率的に活用されていないことを長年疑問に感じている。具体的には、電車内で優先座席だけが常時空席であるにも関わらず誰も座ろうとせずに逆に車内が混雑してしまうことや、駅や施設内のエスカレーター(以下ES)で片側だけを利用し、もう片方は急ぐ人がいるかもしれないときのために、わざわざ空けていることである。私は卒業研究を行うなら、実社会に関わるものを行いたく、大学が駅に直結していることからエスカレーターの輸送効率を上げることをテーマに選択した。
本実験①では、一定期間エスカレーターの右側にサクラを立て、利用者に右側に立つ心理的障壁を下げること。そして初めにエスカレーターの右側に立つ人(ファーストペンギン)を発生させることでエスカレーターの右側を歩く人を減少させ、左右両側立ちという適切なエスカレーター利用を促進することである。
データの分析結果、統計的に有意とは言えないデータではあったが、右側を歩く人の行動を遅らせた可能性のある効果が示唆された。人の習慣を変化させることは容易ではないことを改めて認識し、この実験がエスカレーターの片側空け問題解決の一助になることを期待する。
また、地方での研究は、都市・中間・農村の出身地および人口密度を用いて、他人に対する信頼行動(送金率)と互恵行動(返金率)の地域差を信頼ゲーム実験により検証したものである。大学生83名を対象に分析した結果、いずれの指標でも地域間の有意差は確認されず、人口密度との関連もみられなかった。仮説は支持されず、信頼や互恵は地域差より個人差の影響が大きい可能性が示唆された。背景として、インターネット普及による社会的距離の縮小や、非匿名環境による評判配慮が行動を均質化した可能性が指摘される。今後は匿名条件の導入や個人属性の統制、サンプル拡張が課題である。