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笠井 高人

専任教員紹介

笠井 高人 KASAI Takato

笠井 高人
研究テーマ 経済学の歴史と発展
研究室 良心館463号室
演習(ゼミ)紹介 経済思想と現代社会
詳細 研究者データベース(オリジナルサイト)

 私の専門は経済思想・経済学史です。名前が似ている経済史としばしば混同されますが、経済学史は、経済学という学問がその黎明から今日に至るまで、どのように変化・発展してきたのかを明らかにするもので、経済学の歴史を研究します。分析対象は、人間の日々の営みとしての経済活動ではなく、それをまとめて整理してきた人間の知的営為としての経済学です。経済学を鳥瞰して学問するので、いうなれば経済学学です。

 具体的には、経済学で使われている様々な概念がどのように形成・発展してきたのかを議論します。また逆に特定の概念が経済学でなぜ取り扱われなかったのかも議論します。そもそも経済学(をはじめとする諸学問)の発展は歴史や環境に大きく依存してきました。考えてみれば、十分な輸送・移動手段がなければ国際貿易を議論する必要はないでしょうし、コンピュータの発展がなければ金融や計量経済学はこれほど盛んではなかったはずです。あらゆる学問は一日にして完成したのではなく、長い年月をかけて様々な影響を受けながら少しずつ発展してきましたし、現在も変化し続けていますので、今日の経済学を特徴づける要素は何かという問題も関心事の一つです。

 私が研究対象とするのは20世紀の思想家であるカール・ポランニーという人物です。彼は、世界大戦と世界恐慌の起源を市場経済に求めました。その中で、価格と数量で調整する市場交換だけ取り扱っている経済学を批判し、価格の存在しない市場や物財の移動が非対称な経済のあり方(互酬・再分配・家政)を歴史的・人類学的に発見しました。たとえば、お盆や歳末に贈り物をする習慣が日本にはありますが、これは品物の価格や数量が重要でないことに特徴があるため、価格と数量による調整という枠組みでは説明がつきません。また現今の租税制度を見ても、法的に義務付けられていなければ、納税はけっして「自由な」経済主体が行う合理的な行動ではありません。

 人間の生存を重視したポランニーの主張は、残念ながら現在のオーソドックスな経済学には組み込まれていませんが、経済危機の度に、彼の著作は世界中で再読されます(私も2008年の危機をきっかけにポランニーに触れました)。それは彼の主張が現今理論の弱さを突いているにも拘わらず、うまく吸収されていない証左ともいえるかもしれません。もちろんポランニーの理論も万能ではありません(むしろ穴だらけです)。私は、そのような彼の主張を時代性と共に明瞭化して、その有用性と限界を探求しています。

学生へのメッセージ

学生時代は自由になる時間が多いです。様々な人と会い、色々な経験をしてください。どんなことでも良いので、三度の飯より好きな事を見つけ、真剣に(時には狂うように)打ち込めば、自ずと道は見えてくると思います。

演習(ゼミ)

演習テーマ:経済思想と現代社会


 本演習では経済学説史や経済思想史を学習します。経済学の歴史を紐解けば、始めにモデルありきではなく、その時々の社会問題に対応する時勢論として経済学理論は発達してきました。例えば、格差や環境といった課題は、社会(や特定の人物)がそれを経済問題として認識するからこそ、経済学で取り扱える対象となりました。経済学説史や経済思想史を取り扱って、俯瞰的に経済学を捉えることで、過去の思想家の特徴を明らかにするとともに、現代理論の特性も探求します。
 経済学説史や経済思想史では、経済学そのものを分析対象とするので、1・2年次で学習したミクロ・マクロ・統計の基礎知識は欠くことができません。問題を解けるだけではなく、理論や概念の意味を理解できることが肝要です。必要に応じて適宜補います。
 本演習では、社会問題に関心があり、議論に積極的に参加する学生はもとより、歴史や哲学的議論が好きな学生や本の虫のような学生を受け入れたいと考えています。暗記的にたくさんの事柄を知っている必要はなく、数少ない事柄を深く理解する態度を求めます。また、中学・高校等の教職を目指す学生も歓迎します。

2年次演習

 経済思想史や社会思想に関するテキストを輪読します。通史を取り扱うことで大まかな流れを掴みます。経済思想を理解するには、歴史のみならず、理論に関する基礎的な知識も不可欠なので、ミクロ・マクロの基礎的な理論も補完的に取り扱います。Sandelin, Bo et al. (2014) A Short History of Economic Thought (3rd edition), Routledge.やKurz, Heind (2017) Economic Thought: A Brief History, Columbia University Press.を取り上げる予定です。
 テキストの内容をスライドやレジュメにまとめたうえで、自身の意見を発表してもらい、議論します。経済学に対する期待や不満をもとにした学生ならではの自由な発想を望みます


[履修条件]
特にありません。

3年次演習

 経済思想に関する古典をゆっくりと輪読して理解するとともに、滋味を掬いとります。書籍の内容発表によって、難解な議論を理解した上で他者にわかりやすく伝える技術を育みます。また、思想や理論の時代性を考慮しながら、現代社会に対する有用性と限界にも目を向けることで、論理的思考能力を涵養します。取り扱う資料は受講生と相談して決定します。
 後半は、卒業研究を見据えて、地域を軸に思想や歴史との関わりにおいて経済社会を捉えます。テーマは受講生の関心に合わせて決定します。


[履修条件]
特にありません。

卒業研究

 経済思想に関するテーマを各人で設定し、卒業論文を執筆します。特定の思想家を取り扱い、概念の変遷などに特化するだけでなく、現代的な社会問題を思想史の観点から分析しても構いません。


[履修条件]
特にありません。

関連する科目

既修・併修を強く勧める科目
  • 経済学の歴史
  • 経済思想史1・2
  • 現代経済思想史  
  • 日本経済思想史   
既修・併修が望ましい科目
履修を勧める2年次演習関連科目
  • △2年次演習関連科目-55(経済学史)

履修を勧める3年次演習関連科目
  • ○3年次演習関連科目1-55(経済と哲学)

関連する演習


学生による「私のゼミ紹介」

〈笠井ゼミ2期生・研究テーマ「荻生徂徠の政治経済思想」〉

経済学を学びだして、「こういうところヘンじゃない?」と思う部分もあったのではないでしょうか。「合理的経済人なんて現実には存在しなくない?」「なんで数式なんて使いだしたの?」「経済学はホントに世の中の経済事情を分析できているの?」etc. 笠井ゼミでは、そういった経済学に対する直感的な違和感の正体を、歴史や思想を読み解いていくことによって模索していきます。そこで得られるのは、過去の思想家が「経済学」をどのようにとらえていたのか、に関する詳細な知識だけではありません。各時代における経済学の立ち位置、いわば「その時代に必要とされた経済学」がどのようなものだったのかを、時代状況やイデオロギーに即して俯瞰的にみる視覚を養うことができます。これは、言い換えれば、「今の時代に必要な経済学」がどのようなものか、を探求することにつながる視角でもあると思います。
基本的には輪読や研究報告など、「座学」を中心に活動しています。少人数制で運営されてきた演習では、笠井さんを含めて、フラットで活発な議論を行ってきました。日々の議論を通して、自分は何色の色眼鏡をもって社会を見ているのか,逆に,仲間たちはどんな色眼鏡をもっているのかがわかってくると、少しは彩りの多い学生生活になるのかもしれません。

四年次生
私たち笠井ゼミは少人数ですが、聴講生や大学院生の方々を交えながら経済思想史について活発な議論をするゼミです。本ゼミで主に取り上げる経済思想史については、歴史的な事象に限定された学問領域と捉える方が多いのではないかと思います。確かに、経済学における理論がどのような社会の要請によって育まれたかについて理解するためには歴史的な背景知識が必要になることは間違いありません。一方で、経済思想は人々の行動をより深く理解していく過程によって発展してきた側面があり、哲学・心理学といった人文科学への積極的な関心も重要な役割を果たすと言えます。また、現代の経済事象を支えている数理科学が、どのような性質を持っているのかについて冷静な整理が出来なければ今日の経済思想を垣間見ることすらおぼつかないでしょう。以上のように経済思想史を学ぶことは、経済学に限られた知識を得るだけでなく人類がこれまで書き綴ってきた広大な学問領域を鳥瞰することと同義です。あなたも経済思想史を学び、世界に対する精錬された視野を手に入れてみませんか?