西岡 幹雄
専任教員紹介
西岡 幹雄 NISHIOKA Mikio

研究テーマ | 企業家活動と近現代都市における経済思想 |
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研究室 | 良心館484号室 |
演習(ゼミ)紹介 | 地域の潜在価値の発見と新たなインフラの展開~コロナ後の地政学リスクをふまえた地域・都市のあり方と世界の変容~ |
詳細 | 研究者データベース(オリジナルサイト) |
企業や産業は、新製品・新技術・販売戦略、あるいはこれらを取りまくさまざまな要素や情報を統合し、できるだけ早く積極的に周囲の社会に働きかけようとします。そのために、これらは一定の地域に集まろうとし、その時代や活動範囲によって差が出てきます。
「昔」、昔わたしはみなさんと同じように、経済を勉強しましたが、そのとき資本家や投資家という専門用語は聞いても、企業家や産業活動などに影響を与える状況についてほとんど聞くことはありませんでした。経済学の基本的な教科書にも社会は同質的な消費者と企業から構成され、それらが自動的に満足される状態に達すると、それが経済にとって最適な状態であり、その後、それは安定的に推移するという内容が載っています。しかしながら、現実の経済・経営のトップがはたす認識とそれにもとづいた計画と統率力は、自動的な安定を前提にするのではなく、むしろ不安定さを予想して「機敏に」活動をしているのではないでしょうか?
むずかしい言葉でいえば、人が現実の経済・経営の「集まり」に参加すること自体、割に合うという期待があって、はじめてそこに加わる面が少なからずあります。つまり、参加する人・物・サービス・資金に関する情報のリスクを避けるため地域的な仕組みや組織への参加コストがこの社会には存在しており、さらにいえばそうしたパーフォーマンスの水準を上げていくためには、人々の間で共通な認識と知識、文化の確認、一連の行為に対するモラルの信頼性が重要です。
こうした社会的基盤(Knowledge-based Society)を配慮せずに、現実の経済・経営の発展はありえない。また社会経済が高度化するはずもありません。
現在、「コロナ」におびえ、経済社会生活や考え方に大きな変革をもたらす時代の大転換の時をむかえています。
しかしながら、危機はまたイノベーションと成長機会の出発点であることも事実です。地域や都市を取り巻くネット関係やグローバルな仕組みには、否応のない構造の再編成が待っています。新たな地域や都市のあり方とは、今度の「コロナ」が引き起こしたギア(歯車による伝導)を、いかに私たちの手で再構想するかにかかっているといえます。
そこで,こうした問題について考えるために、社会構造それ自身が安定的な効率性を発揮できる基盤と基礎条件がどのようにすれば整えられるのか、そうした安定的な基準が設定できるのか。とくに今日,政府については、これまでの経済学が強調してきた、企業・産業や個人に対して独自の第三の主体の役割とともに、多様な経済主体間の相互作用を進展させ、それらが活性化するための基礎枠組(社会インフラ)をになう重要な役割を果たしていることについて研究を進めたいと思っています。
演習(ゼミ)
演習テーマ:地域の潜在価値の発見と新たなインフラの展開~コロナ後の地政学リスクをふまえた地域・都市のあり方と世界の変容~
なぜ企業や産業は、一定の地域に集まろうとするのか?そしてそれらの活動は時代や地域環境によってどうして差が出てくるのか?多様な産業と企業が地域と都市の活動にどのような影響を与えるのか、あるいは地域や都市の思想が今日の多様な経済の展開をいかに支えているのかといった事柄について焦点をあてているゼミです。
具体的には、地域の付加価値の持続と、そこでの生活の快適さと働きとの結合による創造性が、いかなる社会的影響を生みだすのか、あるいは活力と文化のための地域力・都市力の潜在性を発掘して、いかなるダイナミックな発展があり得るのかにこだわっているゼミです。
しかし、コロナ後の世界はグローバル化の変容地政学リスクによって、各地でサプライチェーンの寸断とそれによる地域社会のセキュリティ不安に見舞われ、地域・都市や日本・世界に向けたイノベーションと成長機会を模索する機会となりました。ただし、そのことは、地域や都市に、否応のない構造の再編成と新たなあり方をもたらす大きなチャンスとなります。
ゼミでは、毎年、英語プレゼンテーションも心がけながら、関西から中部にかけて交流セミナーを行っています。昨年度も、11月中~12月初旬にかけて、(1)『近年の国際産業社会経済をめぐるInternational and Local Relations:2023交流フォーラム①』、(2)『経済学説をめぐる地域と世界:2023交流フォーラム②』の中で、①川上村から学ぶ限界集落脱出を遂げた産業発展のヒント、②サステナブルツーリズム ーオーバーツーリズムからの移行 ~北海道ニセコ町、③今治タオルのブランディング戦略と差別化戦略、④淡琉球泡盛のあるべき姿 -沖縄に愛されるお酒であるために-、⑤都市経済の中で果たしてきたデパートの役割と今後の展開、⑥持続可能な島 淡路島【エネルギー×⾷】、⑦フードデリバリーの視点から考えるタクシー業界の今、⑧コンテンツツーリズムによる地域活性化などを挙行しました。
今年も、(A)温泉街の活性化によるまちづくり、(B)地域資源の再編成と廃校による地域活性化、(C)観光×地場産業~陶磁器産業による地域経済への還元~、(D)地域創生において地方ファイナンシャル・グループが果たす役割~地方銀行による非金融サービスの可能性と地域価値の再発見~などを通じて、活発に地域産業の各種データや調査分析、あるいは関連文献を研究しながら、高付加価値を生みだす産業構造や価値創造できる地域を探究しています。
今年こそ、国際情勢と内外の不安定さを乗り越えて地域の潜在価値の発見と新たな経済社会インフラにつなげる、ゼミ活動と研究にしていきたいと模索しています。
2年次演習 |
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2年次演習では、「地域の潜在価値」、そのための社会投資とその調達・運営・仕組、そしてこれによる「新たなインフラ」などを学ぶための基礎学習と、それに伴う実践的課題(データ分析や英文発信も含め)を研究します。地域の価値創造機能が日本経済に果たしていた役割を通じて、組織と人々がこれまでの地域のあり方や既成産業を変革しようとする試み、あるいは(コロナや自然・経済社会の激変による、たとえばサプライチェーンの急変、産業の空洞化や経営移転、研究・開発・事業化によるビジネス拠点などの盛衰を通じて、地域・都市・産業・企業がどのような“つながり”(ネットワーク)をもつのかに関心を寄せます。 [履修条件] |
3年次演習 |
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2年次演習に引き続いて、地域の潜在性はどこまで表現できるのか、地域がもつ付加価値の大きさと持続、企業・産業のネットワーク、あるいは持続安定的な経済社会の発展モデルを考えます。「地域の潜在価値の実現とそのためのインフラ展開」と、マクロ的な財政・金融政策・成長/構造改革戦略との整合性を検討し、地域においても、成長循環サイクル、そしてそれによる文化・地域・経済への波及性につながるメカニズムを探ります。 [履修条件] |
卒業研究 |
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各人の設定した卒業研究テーマについて、以下のステップを踏んで、論文作成作業を行います。 |
春学期 卒業研究テーマについてのプレゼンテーション(情報機器を利用したデータや社会経済統計・図表分析を含む) |
秋学期 夏季レポート報告 |
[履修条件] 担当者の卒業研究を登録すること。 |
関連する科目
既修・併修を強く勧める科目
- 〇現代経済思想史
- △日本経済思想史
既修・併修が望ましい科目
履修を勧める2年次演習関連科目
履修を勧める3年次演習関連科目
関連する演習
福岡 正章 | 東アジアの歴史と共通性―経済成長、人口、家族・親族制度 |
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笠井 高人 | 経済思想と現代社会 |
岸 基史 | 持続可能な経済社会を築くために、私達は何をどうすればよいのだろうか |
古賀 康士 | 歴史から社会と経済のしくみを考える—日本列島の経済史を中心にして |
長澤 勢理香 | 比較史から考える |
奥田 以在 | 京都の職人や老舗に関する研究-現代社会と京都のものづくりや文化を取り巻く世界- |
大野 隆 | 経済・社会の課題を見つけ、解決する! |
小野塚 佳光 | 国際政治経済学:ガバナンスの革新と国際システムの歴史的な調整 |
太下 義之 | 文化政策の研究 |
大谷 実 | 周縁から捉える社会と経済:歴史・現在・未来 |
迫田 さやか | 不平等・格差に関する実証研究 |
菅 一城 | 知識・制度・成長――ヨーロッパの視点から見る経済・社会―― |
谷村 智輝 | グローバル資本主義の現状とそのゆくえ |
角井 正幸 | アメリカにおける経済問題の実証的分析 |
山森 亮 | No one will be left behind:連帯経済×社会政策×SDGs |
横井 和彦 | 経済のグローバル化と中国経済 |
学生による「私のゼミ紹介」
私たちは、西岡幹雄先生のご指導のもと、「地域の潜在価値の発見と新たな経済社会インフラの展開~コロナ後の地域・都市のあり方と世界の変容~」をテーマに、輪読で得た知見を踏まえて、グループでプロジェクト研究をしています。現在は、北海道から沖縄まであらゆる地域に焦点を当てて実地調査を行い、百貨店・フードデリバリー・酒造・繊維・観光・エネルギー・農業など、ニッポンの特色ある産業のポテンシャルについて探究しています。
また、コロナ禍が明け、他大学(南山大学・大阪府立大学・大阪経済大学)との交流フォーラムを対面で開催し、研究報告を行いました。交流を深め議論を交わし、多様な視点を取り入れることができ、研究に磨きをかける良い機会となりました。ゼミ内では、合同ゼミをはじめ、懇親会や合宿などを執り行い、学年の枠を超えて絆を深め切磋琢磨しながら、実りある学生生活となるよう、日々活動に励んでいます。
