このページの本文へ移動
ページの先頭です
以下、ナビゲーションになります
以下、本文になります

西岡 幹雄

専任教員紹介

西岡 幹雄 NISHIOKA Mikio

 企業や産業は、新製品・新技術・販売戦略、あるいはこれらを取りまくさまざまな要素や情報を統合し、できるだけ早く積極的に周囲の社会に働きかけようとします。そのために、これらは一定の地域に集まろうとし、その時代や活動範囲によって差が出てきます。

 「昔」、昔わたしはみなさんと同じように、経済を勉強しましたが、そのとき資本家や投資家という専門用語は聞いても、企業家や産業活動などに影響を与える状況についてほとんど聞くことはありませんでした。経済学の基本的な教科書にも社会は同質的な消費者と企業から構成され、それらが自動的に満足される状態に達すると、それが経済にとって最適な状態であり、その後、それは安定的に推移するという内容が載っています。しかしながら、現実の経済・経営のトップがはたす認識とそれにもとづいた計画と統率力は、自動的な安定を前提にするのではなく、むしろ不安定さを予想して「機敏に」活動をしているのではないでしょうか?

 むずかしい言葉でいえば、人が現実の経済・経営の「集まり」に参加すること自体、割に合うという期待があって、はじめてそこに加わる面が少なからずあります。つまり、参加する人・物・サービス・資金に関する情報のリスクを避けるため地域的な仕組みや組織への参加コストがこの社会には存在しており、さらにいえばそうしたパーフォーマンスの水準を上げていくためには、人々の間で共通な認識と知識、文化の確認、一連の行為に対するモラルの信頼性が重要です。

 こうした社会的基盤(Knowledge-based Society)を配慮せずに、現実の経済・経営の発展はありえない。また社会経済が高度化するはずもありません。

 現在、「コロナ」におびえ、経済社会生活や考え方に大きな変革をもたらす時代の大転換の時をむかえています。
 しかしながら、危機はまたイノベーションと成長機会の出発点であることも事実です。地域や都市を取り巻くネット関係やグローバルな仕組みには、否応のない構造の再編成が待っています。新たな地域や都市のあり方とは、今度の「コロナ」が引き起こしたギア(歯車による伝導)を、いかに私たちの手で再構想するかにかかっているといえます。
 そこで,こうした問題について考えるために、社会構造それ自身が安定的な効率性を発揮できる基盤と基礎条件がどのようにすれば整えられるのか、そうした安定的な基準が設定できるのか。とくに今日,政府については、これまでの経済学が強調してきた、企業・産業や個人に対して独自の第三の主体の役割とともに、多様な経済主体間の相互作用を進展させ、それらが活性化するための基礎枠組(社会インフラ)をになう重要な役割を果たしていることについて研究を進めたいと思っています。

演習(ゼミ)

演習テーマ:地域の潜在価値の発見と新たなインフラの展開~コロナ後の地政学リスクをふまえた地域・都市のあり方と世界の変容~


 なぜ企業や産業は、一定の地域に集まろうとするのか?そしてそれらの活動は時代や地域環境によってどうして差が出てくるのか?多様な産業と企業が地域と都市の活動にどのような影響を与えるのか、あるいは地域や都市の思想が今日の多様な経済の展開をいかに支えているのかといった事柄について焦点をあてているゼミです。
 具体的には、地域の付加価値の持続と、そこでの生活の快適さと働きとの結合による創造性が、いかなる社会的影響を生みだすのか、あるいは活力と文化のための地域力・都市力の潜在性を発掘して、いかなるダイナミックな発展があり得るのかにこだわっているゼミです。
 しかし、コロナ後の世界はグローバル化の変容地政学リスクによって、各地でサプライチェーンの寸断とそれによる地域社会のセキュリティ不安に見舞われ、地域・都市や日本・世界に向けたイノベーションと成長機会を模索する機会となりました。ただし、そのことは、地域や都市に、否応のない構造の再編成と新たなあり方をもたらす大きなチャンスとなります。
 ゼミでは、毎年、英語プレゼンテーションも心がけながら、関西から中部にかけて交流セミナーを行っています。昨年度も、11月中~12月初旬にかけて、(1)『近年の国際産業社会経済をめぐるInternational and Local Relations:2023交流フォーラム①』、(2)『経済学説をめぐる地域と世界:2023交流フォーラム②』の中で、①川上村から学ぶ限界集落脱出を遂げた産業発展のヒント、②サステナブルツーリズム ーオーバーツーリズムからの移行 ~北海道ニセコ町、③今治タオルのブランディング戦略と差別化戦略、④淡琉球泡盛のあるべき姿 -沖縄に愛されるお酒であるために-、⑤都市経済の中で果たしてきたデパートの役割と今後の展開、⑥持続可能な島 淡路島【エネルギー×⾷】、⑦フードデリバリーの視点から考えるタクシー業界の今、⑧コンテンツツーリズムによる地域活性化などを挙行しました。
 今年も、(A)温泉街の活性化によるまちづくり、(B)地域資源の再編成と廃校による地域活性化、(C)観光×地場産業~陶磁器産業による地域経済への還元~、(D)地域創生において地方ファイナンシャル・グループが果たす役割~地方銀行による非金融サービスの可能性と地域価値の再発見~などを通じて、活発に地域産業の各種データや調査分析、あるいは関連文献を研究しながら、高付加価値を生みだす産業構造や価値創造できる地域を探究しています。
 今年こそ、国際情勢と内外の不安定さを乗り越えて地域の潜在価値の発見と新たな経済社会インフラにつなげる、ゼミ活動と研究にしていきたいと模索しています。

2年次演習

 2年次演習では、「地域の潜在価値」、そのための社会投資とその調達・運営・仕組、そしてこれによる「新たなインフラ」などを学ぶための基礎学習と、それに伴う実践的課題(データ分析や英文発信も含め)を研究します。地域の価値創造機能が日本経済に果たしていた役割を通じて、組織と人々がこれまでの地域のあり方や既成産業を変革しようとする試み、あるいは(コロナや自然・経済社会の激変による、たとえばサプライチェーンの急変、産業の空洞化や経営移転、研究・開発・事業化によるビジネス拠点などの盛衰を通じて、地域・都市・産業・企業がどのような“つながり”(ネットワーク)をもつのかに関心を寄せます。
 地域の経済社会の位置づけ、とりわけ今後の地域発展の起爆になるイノベーションと価値創造の可能性、あるいは「コロナ」によるグローバル化の激変と地域経済のセキュリティ変容を眼前にして、これを克服できる「地域の潜在的価値の実現とそのための新たなインフラ展開」とはどのようなものか,次の世界のためのそれぞれの地域の潜在性とその発信を見出せる機会を,皆さんと励んでいきたい。
 ゼミの目標は、History (His+Story) *Heart Story (Her+Story)、すなわち「心のこもった自分の『物語』を語るためのゼミ!」を通じて、「今の未曾有の危機に対応できない,実践なき思想・分析は空虚であり,無謀である」、そして「危機を乗り越えるヴィジョン無き勉強は空虚であり,無駄である」ことが語れるゼミをめざしています。


[履修条件]
■2つの外国語もしくは情報言語(英語/ドイツ語/フランス語/スペイン語/ロシア語/中国語/ハングル/情報言語)の成績を選考材料とする。
△2年次演習関連科目-26(世界と関西経済の実践的解明・基礎編)[PDF 203KB]
■△日本経済思想史

3年次演習

 2年次演習に引き続いて、地域の潜在性はどこまで表現できるのか、地域がもつ付加価値の大きさと持続、企業・産業のネットワーク、あるいは持続安定的な経済社会の発展モデルを考えます。「地域の潜在価値の実現とそのためのインフラ展開」と、マクロ的な財政・金融政策・成長/構造改革戦略との整合性を検討し、地域においても、成長循環サイクル、そしてそれによる文化・地域・経済への波及性につながるメカニズムを探ります。
 とくに、経済統計の考え方から導き出される(1)定量的分析と、(2)定性的分析(経済学説・地域・都市の文化と歴史・インタビューによる経営現場などに代表される)とを組み合わせて、地域の産業の競争優位による地域の持続的な成長のための「特化」「分散」と産業を検証します。
 このような研究と分析を通じて、History (His+Story) *Heart Story (Her+Story)、すなわち「実践なき思想・分析は空虚である.思想・分析なき実践は無謀である」ということをゼミの究極目標にいたします。そして、地域・都市の資源と資産を利用するメカニズムを発見し、そのメカニズムが実現した際の有用性と波及性に取り組みたいと思っております。
 基本的には、まず、4月/5月/6月段階では、歴史・政治・文化などの地域の基礎知識とこうした地域の競争優位を確保する経済学説および地域の潜在価値とその付加価値活用にかかわる各種データ・調査分析を行い、7月頃から(インタビュー調査、事例収集、ネットワーク分析、数理統計分析などを駆使して)、実証分析を行います。そして通常の状況では、11月中旬から下旬にかけて、これまでの関西の諸大学・公的諸機関や名古屋地域の大学・公的諸機関ともに、「地域ブランド創生学生フォーラム」の実現をめざします。
 最終的には、今後の方向の基調となりえるような世界発信を念願にしているため、2月初旬には英語論文ができるよう努めていただきたい。そのために、データや統計・図表の意味と分析、プレゼンテーションのための情報機器の活用とともに、国際地域・産業・集積にかかわる、効果の(1)定量的分析および(2)定性的分析を積極的に図りたい。


[履修条件]
○3年次演習関連科目1-26(世界と関西経済の実践的解明・応用編)[PDF 205KB]
■ ○現代経済思想史

卒業研究
各人の設定した卒業研究テーマについて、以下のステップを踏んで、論文作成作業を行います。

春学期


卒業研究テーマについてのプレゼンテーション(情報機器を利用したデータや社会経済統計・図表分析を含む)
卒業研究テーマに関する基本文献と研究文献(個別に指定する)の報告
卒業研究計画書の提出

秋学期


夏季レポート報告
卒業研究中間報告

[履修条件]
担当者の卒業研究を登録すること。

関連する科目

既修・併修を強く勧める科目
  • 〇現代経済思想史
  • △日本経済思想史
既修・併修が望ましい科目
履修を勧める2年次演習関連科目
履修を勧める3年次演習関連科目

関連する演習

学生による「私のゼミ紹介」

 私たちは、西岡幹雄先生の下、「地域の潜在価値の発見とそのための新たな経済社会インフラの展開〜コロナ後の地域・都市のあり方と世界の変容〜」をテーマに掲げ、グループ研究を行ってまいりました。ウィズ・コロナ社会においては、地域自体が本来持つ潜在価値を見出し、それを強みに変えていくことが求められています。今年度は、奈良や淡路島、瀬戸内といった特定の地域を題材とした研究や、ふるさと納税に代表される税制度の研究を行い、他大学との交流フォーラムにてその成果の報告を行いました。新型コロナ感染拡大の影響で昨年に引き続きオンラインでの開催となりましたが、他大学の先生方や学生同士で活発に議論を交わし、知識を深めることで、刺激のある有意義なものとなりました。
今後も、これからの社会を担う者として更にクリエイティブな主体となるために、理論に対する知識をより深め、それを基に学生らしい「ワクワク感」のある地域の研究を進めてまいります。

西岡ゼミ集合写真
<『同経会報NO.89』から転載>